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激突!勇者二人VS魔王軍一万

 「あー、魔王軍の馬鹿どもに告ぐ。お前たちがそんな所に居座っているせいで、皆、大変迷惑している。さっさと帰って、マスかいて寝ろ!」

 魔王軍が迷惑だというのは事実だ。

 一応、道は開けてあるが、その両脇に厳つい兵士たちがいるのであれば、まともな神経の持ち主なら回り道を選ぶ。

 「ロックさん、もう少し言葉を選んで下さい」

 「何を言うか。ちゃんと選んでいるぞ。あいつらの様な低能には、とても分かりやすい言葉を使ってやったのだ」

 「そうなんですか?」

 「おう。自分が人に迷惑をかけている自覚が無いような馬鹿だからな。小難しい言葉を使っても理解などできん」

 彼我の距離は、弓矢がやっと届く程度。

 二人は特に声を張り上げている訳ではないが、よく通る声は、それでも魔王軍兵士の耳には届く。

 「貴様らは何者か!その無礼な物言いは、我らが魔王軍と知ってのものか!」

 魔王軍の一人が、声を荒げる。

 「見ろ、さっき、ちゃんと王軍に告ぐって言ったのに、あんなことを言いやがる。な、馬鹿だろう?」

 「折角、馬鹿じゃないって証明しようとして、小難しい言葉を使っているつもりなんですから、余り馬鹿にするのも可哀想ですよ」

 「貴様ら!命が要らんようだな!」

 その言葉と共に、前線の一角が動き始める。

 「さて、一応、退去勧告は済みました。応じてもらえないようですので、ここからは実力行使といきましょう」

 初めから、そのつもりだったのに、白々しいとは、思わない。

 「応!行け!」

 「はい!行きます!」

 キヤルが駆け出す。

 それに合わせて轟音。

 ロックの右手の銃が火を噴いた。

 弾丸は先頭を走る魔族の肩口に命中。

 魔族に動揺が走る。

 「銃だ!気を付けろ!」

 彼らは軍を名乗っていても装備はバラバラ。

 盾を持っている者も、少なくともこの場にはいない。

 であれば弾丸を避けることが出来るというのでもなければ、気を付けようもないのだが。

 魔族たちが、ロックの銃に気を取られている隙に、キヤルは彼らの脇を素通りして敵陣の奥を目指す。

 子供一人見逃した所でどうという事もないと判断したかもしれない。

 キヤルを見送りながら、更に引き金を引くロック。

 「馬鹿が!銃なんぞ弾を撃ち尽くせば、それまでよ!」

 続け様に撃たれた弾丸は、開戦の一発を合わせて六発。

 再装填しなければ、次は無い筈。

 だが。

 「バーカ」

 弾切れの筈の銃の引き金を引く。

 『空の一撃』により生成された弾丸が撃ち出される。

 油断した処に、有り得ない一撃は驚愕と恐慌を呼んだ。

 数を頼りに殺到し、圧し潰せば済む筈なのに、近寄る事を躊躇ってしまう。

 「弓だ!魔力弾でも良い!撃て!」

 無数の矢と魔力の弾が、たった一人の銃士に向けて放たれた。

 一発ずつしか撃てない銃で、迎撃する事は不可能。

 矢は広範囲に放たれていたので、身を躱す事も不可能。

 絶体絶命。

 だが。

 だからこそ。

 彼は不敵に笑う。


 その頃、キヤルは困っていた。

 取り敢えず、集団の中で一番強いと思われる者を倒して、動揺の隙に更に奥へと進み、最終的にこの軍団を率いる者を倒す事を目標にしていたのだが、思わぬ邪魔に悩まされていた。

 少年の周囲を囲んでいるのは、犬頭族(コボルト)の一団。

 彼等は忠誠に厚く、集団で狩りをしていた事から、連携しての攻撃も上手い。

 それだけなら何という事もないのだが。

 この集団を率いている男の顔はチャウチャウのそれであった。

 獅子を可愛く、或いは、間抜けにした様な顔で小さく円らな瞳が愛らしい。

 だが、おっさんである。

 「くぅ、やりにくい」

 一人一人は大して強くない。

 連携は確かに取れているが、それでもキヤルの敵では無い。

 攻撃を搔い潜り、殴りつけようとする。

 その時、円らな瞳と、目が合う。

 思わず力が抜ける。

 決定打にならない。

 出来るだけ回復術を使わずに、格闘術の鍛錬の成果を確かめたいと思っていたのも悪かった。

 回復術を使えば、打撃の強さは関係なく、相手を無力化出来るのに、それを使う機会を逸している。

 こういう状況では、一度決めた事は、何故か覆し難い。

 冷静に考えれば、自分で勝手に決めただけの事なのだから、破っても誰に咎められる訳でもないのに。

 殴りかかってきたのを躱し、反撃に移ろうとした瞬間。

 轟音と悲鳴。

 チャウチャウ男の意識が、そちらに向く。

 その隙に跳躍。

 男の肩を踏み台に、更に飛ぶ。

 倒すのを諦めて、先に進む事を選択したのだった。

 「僕もまだまだですね」

 反省の残る一戦だった。

 

 襲い来る無数の矢と弾。

 ロックは左手で腰の黄金銃を抜き、銃口を天へ。

 陽光に煌めく引き鉄を、ゆっくりと引く。

 撃鉄は落ちない。

 そもそも、付いていない。

 何も、起きない。

 そのように見えた。

 魔族たちは、矢に貫かれた男の姿を見た。

 それは願望が見せた、まぼろし。

 突風。

 巻き起こる風に絡め捕られ、矢も魔力弾も、男に届かない。

 風は竜巻の如く、男の周囲を旋回。

 風の中、哄笑が響く。

 「がはは!驚いたか?これが俺様の新しい力!ゴールデンマグナムの威力!」

 吹き荒ぶ風に、髪を靡かせ、黄金の銃口を敵集団に向ける。

 刹那。

 竜巻から放たれる、無数の風の刃。

 不可視の刃が魔族を襲う。

 「魔法銃だと!」

 引き鉄を引くことにより、弾に込められた魔法を発動させる神秘の武器。

 弾が高価なくせに使い捨てな事や、込めた弾の順番通りにしか魔法を発動できない使い勝手の悪さ、そもそも、銃そのものが高価なことなどが理由で、実戦で使われる事は滅多にない。

 「負傷したものは下がれ!」

 数十人が風の刃に襲われていた。

 それらを下がらせても、まだまだ数の有利は覆らない。

 飛び道具は効かない。

 肉薄し、剣を、牙を、爪を突き立てる。

 魔族にはそれしか取れる手段がなくなった。

 魔族の男共が覚悟を決めかけた時。

 「バァアン!」

 お道化た言葉。

 再び引かれる黄金の引き鉄。

 放たれたのは、拳二つ分の大きさの炎の玉。

 それは男たちの足元に着弾。

 炎が弾け、熱と衝撃が、地獄を呼ぶ。

 「がはは!これは楽ちん!」

 鉛玉では、一度の射撃で、普通は一人。

 貫通させて複数人に損害を与えるとしても、数人。

 殺さない前提なら、逆に貫通した弾が、後ろの的の急所に当たらないように計算しなければならず、面倒臭い。

 だが、魔法弾なら威力は一定。

 その上で大勢の敵に損害を与えることが出来る。

 「バリバリ!ドカーン!」

 三度、引き鉄。

 放たれたのは、雷撃。

 真っ直ぐに飛翔した雷は、数百人を感電させ、焼いた。

 それでも銃士に襲い掛かろうと走り寄る勇士の足を狙って。

 「ピッキーン!」

 放たれたのは氷の塊。

 それは膝に命中し、両足を凍り付かせる。

 勢いは殺せず、倒れ込む男に。

 「ざーんねん」

 笑う。

 「そうだ!次が風の魔法とは限らん!撃て!」

 その号令に応じ、放たれる矢の雨。

 しかし、それは前回と同じ、風に無力化され、不可視の刃による被害を出した。

 魔族の行動を予測し、予め、二発目の風刃の弾丸を、装填していたのではない。

 『空の一撃』の応用だ。

 『空の一撃』によって生成される弾丸の種類は、銃の勇者が、その銃で放った事のある弾丸であれば、勇者の任意になる。

 つまり、風刃、火球、雷撃、氷結、引き金を引くたびに、ロックの選んだ魔法が放たれるという事だ。

 今はこの四種かもしれないが、新たな弾を手に入れ、撃つ度に、その種類は増えていく。

 魔法銃の欠点は『空の一撃』という能力の前で、欠点にならない。

 「がはは!さあ、次は、どれにしようかなぁ〜」

 ロックが一歩前へ。

 魔族は、無傷の者も、負傷した者も、恐怖に引き攣った顔で下がる。

 既に勝敗は決した、と言っても過言ではなかった。


 キヤルは飛んでいた。

 魔族たちの頭を踏みつけながら。

 巨人族の大きな腕が、それを捕まえようと伸ばされる。

 その手首を逆に掴み、腕に抱きつくようにして、関節を破壊。

 痛みに振り回された腕の勢いを借りて、再び飛翔。

 「さて、何時までもこうしている訳にも参りませんし、どうしましょうか」

 着地(着頭?)の瞬間を狙って、槍が飛んで来た。

 宙で体を捻り、何とか回避。

 損害は、シャツのボタン一つ。

 そして、また別の魔族を踏み台に、槍が飛んで来た方向に飛ぶ。

 暫く後、キヤルは一角族の偉丈夫の前に立っていた。

 「楽しげに跳ねていたな?小僧?」

 「はい。存外に楽しかったです」

 「ふん。抜かしよる。俺の前に立ったからには覚悟は出来ているな?」

 大剣を抜きながら訊ねる。

 「覚悟?必要ですか?」

 それに応えず一閃。

 「まあ、躱すわな」

 人の頭の上を飛び跳ねる身軽さがあるのだから、それ位は簡単だろう。

 だが、一角の男は勝利を確信している。

 彼が攻撃を続ける限り、無手の少年は躱し続けるしかない。

 であれば、いつかは疲弊する。

 そして、万が一少年が攻撃に転じ、それが我が身に届いたとしても、その小柄な体から繰り出される打撃など、たかが知れている。

 一、二、三、四、五…

 大剣が振られ、少年が躱した回数はどんどん増える。

 その間、周りの兵は、勿論、ただ見ているだけだ。

 これに手を出そうものなら、後で一角に叱られる。

 余裕を持っていても、こう何度も避けられると、流石に苛立って来る。

 雑な横殴りの一撃。

 それを屈んで躱し、踏み込んで正拳の一撃。

 腹にそれを受けた男は笑みを浮かべようとして失敗する。

 「ぐぅ…なんだ?この衝撃は?」

 思わず膝を着く。

 「小僧、何をした?」

 「浸透勁といいます。僕の力を貴方に流し込むことで、貴方の中の力の流れを阻害しました」

 「小難しい事は分からん!」

 耐久力、持久力には自信がある。

 その自分を一撃で、追い込むとは。

 子供だと思って油断したのは、言い訳にもならない。

 だが、まだ、死んでいない。

 死んでさえなければ、負けではない。

 一角族の回復力を持ってすれば、すぐにでも。

 「失礼します」

 ん?と顔を上げた所に回し蹴り。

 ぱきん。

 音を立てて折れる角。

 「なぁああああああああああ!」

 驚愕と絶望の悲鳴。

 それは彼にとって誇り。

 種族にとって回復力の源。

 それが折れた。

 「貴方がた、一角族の回復力は厄介ですので、折らせていただきました」

 男には、最早立つ気力は無い。

 少年は、角と共に戦意をも折っていた。

 「さて、次は…」

 辺りを見回す。

 周囲の兵の腰が引けている。

 キヤルに知る由もなかった事だが、今戦ったのが、この軍の将、最強の一人。

 それを一撃で降した、得体のしれない子供に恐怖を覚えている。

 「あの、逃げて頂けるのでしたら、追いかけはしませんよ?」

 その言葉を切っ掛けに逃げ出す兵士たち。

 恐怖は伝播する。

 一度、逃げ出す者が現れた軍は、その巨体を保てない。

 実質、勝敗が決した。

 逃げ出さなかった幾人かの強者を、二人で手分けして無力化する。

 一万の兵対二人の勇者。

 勇者の圧勝であった。

 



最近、少し困っていることがあります。

クロエのことなのですが、彼女の登場する場面を考えるとき、彼女の顔が、あるVtuberの方のそれになっているんです。

一さんってご存知ですか?

私も詳しくは存じ上げていないのですが、鮫ちゃんの動画や、お勧めで上がって来るサムネで、お顔は知っていたのです。

そのお顔がクロエの顔と重なっているのです。

体や性格は全然違う筈なんですが。

どうしたものでしょう。

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