第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
平成を生き延びた昭和の聖女
平成が終わることが噂されるようになってきたある日。
スマホが普及していくにつれて、電話相談件数は、日に日に減っていったのだった。
公園のベンチでボーッとしているように見えた平成の聖女ひろ子を見付けた ゆいこ。
ゆいこ『ひろ子♪こんにちは♪』『なんか暇そうネ。』
ひろ子は、公園の入り口付近で送迎バスを待つ親子連れを見つめていた
ひろ子『本当に暇なら良いんだけどねぇ~』
ひろ子の視線の先に猛スピードで子供達に迫って来る自動車を見付けた。
咄嗟に跳んだ ゆいこ。
自動車は、ゆいこごと子供達を撥ね飛ばして公園の反対側の壁に激突して止まった。
子供達は全員無事だったが、泣き出した子供達に親達がかけよって行った。
ゆいこに関心を示す人は、一人も居なかった。
ひろ子『ゆいこは何をやっているの!』
ひろ子『さっきより、HP 半減しているじゃないの!』『HP 0になったらどうするの!』
フルゲージの ひろ子は、ゆいこに無関心な光景を指した。
ひろ子『平成の社会は、こんなことしてもダメなの!』
と、その時、ひろ子の携帯電話が鳴った。
ひろ子が、消えた。
子供達が無事な光景を眺めながら
ゆいこ『子供達が無事なら、それでいいじゃない。』
ゆいこ『ひろ子の速さなら、楽々できることでしょうに。』
ゆいこ『ひろ子は何をしているの?』
もう一度、無事な子供達を眺めながら
ゆいこ『少しは しかこみたいに成れたかなぁ〜』
そっと、公園を立ち去る ゆいこ。
平成が終わることが決まった日。
公園のベンチでぐったり座っている ひろ子を見付けて
ゆいこ『どうしたの?』
ひろ子のHP は、残り僅かだった。
ひろ子『何で ゆいこは、平成が終わろうとしているのに元気でいられるの?』
と言ったところで、ベンチに倒れたのか、横になったのか、わからないくらいゆっくりと、力尽きて消えていった ひろ子。
(ひろ子):(ガラケーじゃ、もう無理。)
ゆいこ『がらけェ~?』
ひろ子の最期の言葉がわからなかった ゆいこ。
ゆいこ『いつ見ても、フルゲージだったのに。ひろ子に何があったの?』
携帯電話がわからなかった ゆいこには、スマホがないとやっていけないなんて、全く理解出来なかった。