【1000文字小説】おばあさんの感情
あるところに、三匹の動物と一人のおばあさんが暮らしていました。動物の一匹はうさぎ。ピンクのモフモフした毛に覆われている可愛い動物です。動物のもう一匹は猫。全身灰色の毛に真っ黒の瞳を持ったかっこいい動物です。動物の最後の一匹はキリン。黄色い肌に茶色いヒョウ柄の模様を持つ優しい動物です。
うさぎと猫とキリンとおばあさん。おばあさんは三匹の動物を心から愛しており、三匹の動物もまた、おばあさんを心から愛していました。
しかし、時がたつにつれておばあさんは感情を失っていきました。それが年のせいなのか、はたまた病気のせいなのか三匹には分かりませんし、もちろん治すことも出来ませんでした。そんな時、猫が「僕たちの感情をおばあさんに渡せばいいんだ」と言いました。「それは名案だね」「さっそく渡そう!」と二匹も猫の提案に賛成しました。
最初にキリンが『喜び』をおばあさんに与えようとしました。すると、キリンの体から丸く黄色の光が出て、おばあさんの体の中に入っていきました。その後、おばあさんはニコっと笑いました。動物たちもニコっと笑い返しました。しかし、キリンだけが笑うことは出来ませんでした。
また年月が経ち、おばあさんは笑わなくなりました。また感情を失ってしまったのです。次に猫が『悲しみ』をおばあさんに与えようとしました。すると、猫の体から丸く灰色の光が出て、おばあさんの体の中に入っていきました。その後、おばあさんはウォンウォンと泣きながら、キリンが『喜び』を失ったことを悲しみました。動物たちもそれにもらい泣きをして、家の中がはおばあさんと動物たちの泣き声であふれかえりました。しかし、猫だけが涙の一粒も流すことは出来ませんでした。
また年月が経ち、おばあさんは泣き止みました。また感情を失ってしまったのです。最後はうさぎが感情を渡す番でした。しかしうさぎは「このまま感情を渡してもおばあさんはまたそれを失ってしまう。なにか別の方法を探さないか?」と言いました。キリンと猫は怒りました。うさぎだけが感情を失わないのは不公平だったからです。『喜び』を失ったキリンと『悲しみ』を失った猫は、一つの感情がない分、激しくうさぎに怒りました。すると、喧嘩をしている動物たちを見ているおばあさんが泣きました。確かにおばあさんが抱いているのは失ったはずの『悲しみ』でした。動物たちはそれを見て、感情が戻った!と、喜びました。するとおばあさんもそれに笑い返しました。おばあさんに『喜び』までもが戻ったのです。そしておばあさんは目を瞑ると、この場で喜んでいないキリンに『喜び』を返しました。次に猫にも『悲しみ』を返しました。二つの丸い光はそれぞれの体に戻っていきました。そしておばあさんはまた感情を失うと、安らかに眠りました。三匹の動物たちはおばあさんの周りで精一杯悲しみましたとさ。【おしまい】
今回の小説はネッ友さんのお祝い事で送らせてもらった小説です。多少身内ネタが入ってますが、普通に読んでも楽しめる作品かと。