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第4話 ハツライブ

ついに「SHABBY NOISE」に新が加入してからの初のライブが始まります。

午前10時。俺は2時間くらいかけて、都内のアウトレットモールに着いた。

ステージの準備はスタッフさん達がやってくれていた。俺は本番まで何もすることがないので、控室でツイッターでエゴサーチをしていた。

「今日は都内のアウトレットモールにシャビーノイズが来るってさ!」

「近所のアウトレットにシャビーノイズっていうバンドが来るらしいけど、このバンド確か紅白に出てたよね?」

「うわっ! 今日俺の働いてる職場の近くのアウトレットモールにシャビー来るじゃん! 途中で退社して行こかなー」

という声が多く、改めてこのバンドは有名なんだなと感じた。

エゴサーチに夢中になっていると、スタッフさんが急に控室に入って来て、「やばいです!人が多すぎて入場規制がかかってます!」と手のひらの汗までわかるような焦りの表情で口に出した。

しかし、桜井さんは「そうか」と慣れているような表情で返した。しかし、心のどこか焦っているような感じも読み取れた。

恐る恐る会場の様子を見てみると、そこにはまるで水不足で水を求めているような人々が集まった感じくらいの大勢の人がいた。

こんな風景を見たのは一昨年前に行った夏フェス以来だ。

本番まで約一時間。人生で生きてきた中で一番緊張が走った。


****


午前11時。ついに自身初ライブの時間がやってきた。大勢がライブを待ちわびる中、俺はチューニングを始める。

周りからは、「あのギター誰だ?」「サポートメンバーじゃね?」という声が多々聞こえる。

サポートメンバーじゃなく、正式メンバーだよ。って返したくなる中、俺は静かにチューニングをしている。

「川瀬君!準備はできたか?」と桜井さんが声をかける。ついにはじまるようだ。

「完了しました!」と俺が言った瞬間、「1、2、1234」と久礼さんのオープンハイハットのカウントがはいり、富山さんのゴツゴツに歪んだリフで新曲のDistortedが始まった。

この瞬間。地鳴りのような歓声があがり、観客が喜びで震えた。

言葉では言い表せない幻想的なコード進行に、しかも観客の反応。この時間が永遠に続けば良いと思った......


一曲目が終わり、桜井さんがMCを始めた。

「どうも!俺たちシャビーノイズだぜーぇ! 盛り上がってるかー!」と盛り上げすぎて、もう盛り上がらないほどに達したくらいで、俺の紹介をしてくれた。

「元々ギターを担当していたヒロが辞めてから数か月が経ち、新たに新メンバーが入ってくれた。 紹介するぜカワセアラター!」

観客の反応と共に適当にギターソロを弾いた。

「ヒロの心も受け継ぎながら、これからはこの新しいメンバーと共にシャビーノイズを築き上げていくぜー! よろしく!」と、桜井さんの熱いMCが終わった。

「では最後に歌います。GET SEASON」

どこかで聞いたことあるようなイントロがはじまり、Aメロではなんとイベント会場という狭い場所で観客のサークルピットが始まってしまった。

出禁をくらう心配と小さな子供たちの心配をしながら弾いていたので、少し走り気味になってしまった。

富山さんのギターソロ中に、隙ができ、観客エリアを見渡すと、なんとサークルピット用のエリアが分かれていたことに気づいた。

さすがに二度見したね。モールのイベントにサークルピット用のエリアがあるなんて初めて見た。


最後はリハーサル通り、俺のGコードで終わった。

終わりの挨拶に桜井さんが感謝の気持ちを込めて「今日はありがとうございました! 俺達がシャビーノイズでした! あと、CD買ってくれたら嬉しいなぁ では、さようなら!」とライブを締めくくった。


ライブが終わり、俺は帰る支度をする。

にしても、なんともいえない喜ばしさを感じる。体育祭や文化祭以上に達成感を感じる。

これからずっとこんなのが続くのかと思うと、ゾクゾクする。

最後はメンバー全員と謎のハイタッチをして控室を出た。

最寄り駅に着き、電車が来るまでホームでツイッターでエゴサーチをする。

「今日のイベント最高だった!」

「新メンバーは他のメンバーより若そう」

「速報  シャビーノイズ、新メンバーはカワセアラタ」

という自分に対する声が多く、嬉しい感じがした。しかし同時にプレッシャーも感じた。

電車が到着し、乗ろうとした瞬間、ラインの通知音が鳴った。マナーモードにしてなかったのかと思いながらメッセージを見てみると、それは戸崎からだった。

「もしかしてアラタ君って、シャビーノイズの新メンバー? 別に責めてる訳じゃないよ!! 今、いとこと遠出をしていて、アウトレットモールに来ているんだけど、イベント会場が賑わっていたから、少し見てみるとシャビーノイズがライブをしていて、凄いなぁって思いながら見てるとそこに、アラタ君の姿があったから」

汗が気味悪く脇の下に伝わった。



次回もよろしくお願いします!

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