クラス
すいません遅くなりました。
『クラス分け表ってどこだ?』
そう思いながら花蓮はキョロキョロして、周りを見ていた。
しかし、体育館はとてつもなく広いのでクラス分け表らしきものは見当たらなかった。
なので、花蓮はクラス分け表自体を探すのではなく、人だかりを探すことにして、もう一度周りを見渡した。
結果から言うとすぐに見つかった。
花蓮の目に写っていたのは、甘いものに群がる蟻のごとくうじゃうじゃと沢山の1年生で溢れかえっていた。
まさに、〝人ゴミ〟という言葉が相応しいだろう。
そんな光景を見て、憂鬱な気持ちになりながら少しずつゆっくりと足を人ゴミに向けた。
『俺はどこだ?』
と思いながら目を凝らして表を見ようとしてみたが、案の定人が壁になって全く見えない。
「やっぱり、見えないか……ん?」
………ザッ
そう呟いただけだった。
ただの独り言だ。
誰かに言いたかったわけではない。
なのにも関わらず、花蓮の放った言葉は言霊のようにそうしなければならないように自然と周りの人の体を動かせた。
人ゴミでできた壁が一気に裂けて、クラス分け表の下まで直進するだけで行ける真っ直ぐな道ができた。
花蓮はシンプルに驚いた。
ただの独り言でこうなるとは誰も思いもしないだろう。
「…ありがとう助かる」
花蓮はここで礼を言わないのも、かっこ悪いと思い、素直に礼を言った。
そう言いながら、道を通っていると、後ろで1人また1人また1人とバタバタと倒れて行く音がした。
花蓮は気づいていたが、わざわざ見るほどでもないと思ったので無視して進んだ。
直進するだけだったのですぐにクラス分け表の下まで着いた。
『俺の名前は……あった』
花蓮の名前はすぐに見つかった。
なぜなら、1番左の1番上、つまり主席である。
しかし、花蓮にとって主席などどうでもよかった。
クラスの方がよっぽど気になるのだ。
『クラスはっと…Sクラスか』
この学園は実力主義であるのでクラス分けも実力順で上から組まれている。
記号で表すと、S→A→B→C→D→E→F、まだある。
Sクラスはごく限られた人数しか入ることができない。
その数、学年ランキングトップ10、だけである。
いくらイケメンだろうが可愛かろうが、優しかろうが、この学園は全て実力で決まるのだ。
全てが。
Sクラスに入るのはなんとなくわかってはいたが、クラスは関係なく友達を作って仲良く学園生活を送っていこうと思っている。
これからの学園生活に妄想を膨らませて、ワクワクしながら自分用に作られた道をまた通った。
「ありがとう、これからよろしくな」
と、全力の笑顔で道を開けてくれた人たちにもう一度礼を言って寮への帰路に着いた。
どうでしたか?