第66話
(イチかバチか……)
スカイは防御を捨てた。相手に作戦を悟られぬように、徐々に腕の可動範囲を狭めていく。急所に当たりそうな弾だけは弾いて、意識を別のところに誘導する。
(ここか…… 違うな。意識を……探せ……)
スカイが探しているのは、ビショップの意識の外。俗に言う、不意をつける場所。
(くそっ! 集中しろ!)
鋭く細かい痛みが、集中力を阻害する。顔が焼けるように痛い。
スカイは無意識のうちに、変則的な呼吸をしていた。ごく浅い呼吸を数回繰り返すと、深い呼吸を1回。浅い呼吸の回数は法則があるのか、毎回違う。
そんな呼吸を繰り返し、スカイの意識は研ぎ澄まされていく。焼けるように痛かった顔からも、痛覚が消えた。と、同時にスカイが目を見開く。
(そこだ……っ!!!)
ビショップの足元、立っているその場と言ってもいいほどの内側に鋭いトゲが生える。その風圧でビショップの前髪がめくれるほどのスピードで、それは発生した。
いきなりのことに呆然とし、ラッシュが途切れたビショップにここぞとばかりに追い討ちをかける。先の攻撃で宙を舞う床片を核に、作ったトゲでビショップを囲む。
「きゃっ!」
「ハッ……ハッ……。俺の……勝ち……だ!」
細かいトゲだけを残して、肩で息をするスカイは、唯一の武器をビショップの喉元へと近づける。
(ああ…… 戻ってきた……)
さっきよりも顔が熱い。焼けるような痛みが限界の近くであることを告げている。
「さぁ…… 負けを、宣言、しろ……!」
喉元へと近づけたトゲが皮膚へと当たるほどの近さになった。
「……わかったわよ。私の負け。これでいいでしょ?」