第63話
闘志の風が止むと、金の毛並みを持つ獣が姿を現す。
《Grrrrr!》
以前の獣とは違う、一切の人間味を感じないうなり声。理性が失せていそうな、爛々と輝く狩人の瞳。
ただの獣に成り下がったギア――
《タオス…… タオス…… tAoSU……》
――否、ただの戦闘マシーンになった獣に、エリー、ノームは困惑を隠せなかった。
「ちょ、ちょっと! なんなのよ、これ!?」
獣は類を見せない速度で駆け回り、サイに食らいつく。
サイがごちそうとでも言うかのように、獣はサイ人形にがっつく。
さすがに半身を持っていかれては修復が間に合わなかったのだろう。サイ人形は次々と消滅する。
《Grrrrr…… Grrrrr……》
獣はポーンの方へと向き直ると、喉を鳴らす。
「……俺たちは、あれ、止めないといけないんだよな?」
戦闘相手のいなくなったノームは、ふと声をあげた。同じく対戦相手のいないエリーがそれに応える。
「ええ。……目を醒まさせてくれってそういうことだったのね」
息を整わせ終えたエリーはそっと、武器の形を変えた。フライパンから、漫画で見かけるような大きな中華鍋へと。
「とにかく、ギアがあいつを倒すのを見守りましょう。……きっと、私たちじゃ手が出せない戦いになるわ」
ジグザグに跳ぶように進むギアと、それを余裕なさげな表情で見続けるポーン。どう来るのかを予想してシュミレートしているのか、武器の球体を行ったり来たりさせている。
「来るなら来なヨ。……ボクは負けないヨ」
《Grrrrr!》