第60話
「あたしね、みんなには聞こえない声が聞けるの」
サラリ。髪が揺れる。
「心の声――俗に言う、読心術って言うやつかしら。あ、読“唇”術じゃないわよ? それがね、生まれつきでできたのよ」
床に刺していたレイピアに手をかけ、ゆっくりと引き抜く。
「はい。ネタバレ終わり。じゃあ…… 戦いに戻りましょうか?」
ビショップのその言葉に、銀介たちも武器を構えた。
刹那、ビショップが得物を繰り出す。避ける銀介――の進行方向に、サイの壁が現れる。
「しまっ……!」
「隙見っけ」
ビショップがニコリともニヤリともとれる笑顔でレイピアを構える。
「させない!」
ウンディーネが飛びかかる――が、ビショップはお見通しとでも言いたげにサイの壁を作り出す。ついでに、別方向にも壁を作り出す。後から作ったほうの壁に誰かがぶつかる音がなった。 その音と被るように、レイピアが銀介に傷をつける。
「グッ……!」
ポタリ。赤い雫が銀介の腕をつたう。
「知ってる? 相手を斬るとね、斬られた相手の体内に30もの傷をつくる武器があるって」
ポタリポタリ。雫が飴色の水溜まりを作り出す。
ビショップは自分の武器がそうであると言いたいかのように、ピッと勢いよくレイピアを弾いて血を飛ばす。
「それにサイって便利よねぇ。どこにでも武器を作れるんだもん。手元とか……空中とか」
「!!」
銀介以外の壁に阻まれた2人に向かい、空中に現れたレイピアが重力に従う。
「ねぇ。数で勝ってるのにさ、なんでそんなに弱いのか教えてよ? アハハッ!」