第52話
「でも、ちょっとばかし残念なお知らせみたいだよ? 時間切れってやつ?」
真面目な顔で話してからルークがニヤリと笑む。
「と言うわけで、さようなら」
枝から枝へ飛び移るように、ルークは去っていった。
《待てっ……くっ!》
意識を失った仲間を置いていくわけにいかないギアは、追跡をあきらめた。
息を吐いて、元の人へと戻る。
「! っとぉ、これは完全に回数切れガル」
長めな前髪をつまみ上げ、ため息をつく。
「う……」
1番最初に意識を取り戻したのは蒼だった。
「ギア……さん?」
「気がついたガル?」
蒼が戸惑ったのも無理はない。金寄りの茶髪だった髪が、完全な金髪になっていたのだから。
「ああ、髪は呪いの影響ガル。リミットが近づくと、獣の色に近くなるガル」
あの毛並みに似た色の髪が風になびく。
「ルークを逃してしまったガル。……蒼、大陸の中央で何か思い出せないガル?」
「……あれ以上、何も思い出せないんです」
蒼は力なく、首を振る。「そうか」と言ったギアの声は空に消えた。
「ぅ……ん……」「てて……」
他のメンバーも意識を取り戻し始めた。
「……ギアって金髪だったっけ?」
「ああ、これは……」
先ほどと同じようなやり取りが繰り返される。
「収穫なしか。……どうするべきか」
きぃぃぃいいいぃぃぃん
「どうしようもないな」
ひぃぃぃいいいぃぃぃん
「うるさいよ!」
「……あれ、木の前にあるのって……?」
声を荒らげた銀介の肩越しに、蒼が大樹の前に表れた模様に気づいた。
みんなで駆け寄ってみると――。
「――魔法陣……か?」