第50話
ハープが出来上がると、ルークはそれを爪弾き始める。
「!!」
流れ出した音に、ノームの体は硬直する。微かな意識の中、敵陣の中で聞いたあの音と寸分違わぬ音だったからだ。
「対象を決めんのは姫さん側だし、正直どうなるのかはオレにもわかんねぇけど……」
旋律の中、ルークのつぶやきが宙に消える。
しかし、次の言葉はしっかりと蒼たちに届いた。
「同士討ちしちまいな?」
愉しそうに、ルークは微笑んだ。そして、サイのバリケードを消し、大樹の枝へと飛び乗る。
やっとギアの体力が戻った時、同じタイミングで旋律も止んだ。
《……何が来る?》
バリケードが消されたことを考え、ギアは後ろにも意識を回した。すると、異変に気付く。――背後の仲間たちで立ち上がったままの気配が1人分しかないことに。
《なんだ?》
振り返ると、うつむき気味に下を見続ける銀介の姿があった。手にはサイで作られた武器が握られている。
「……」
言葉なく、ゆらりゆらりと銀介はギアに近づく。
《銀介?》
手の届きそうなほど近くまで来ると、銀介は立ち止まった。そして、軽く武器を構えると――
《何をする!?》
――ギアに襲いかかった。
「言っただろう? 同士討ちしろと」
《クッ……》
ルークが愉しそうに笑い声をあげる。
倒れていた他のCOLORメンバーは操られた銀介にやられたのだと、ギアは知覚した。
気づいたとしても、銀介が全力で襲いかかってくることには変わりはない。だからといって、銀介を討つことは出来ない。
《どうしたら……?》
銀介の攻撃を避けつつ、ギアは思案していた。