第49話
――そんなフルパワーな行動を繰り返していたせいか、ギアの跳躍がじょじょに遅く遅れていく。
《グッ…… ガァアアアァァァ!》
疲労しているなか、叫び声で気圧そうとしたのか、はたまた渾身の一撃を繰り出そうとして叫び声が出たのか。大きな咆哮が場を包んだ。
《消え、失せ、ろぉ!》
声と共に先程とは明らかに違う、後先考えないギアの斬撃が繰り出された。サイで強化された爪は、ルークのサイを切り裂き、おまけに風圧で服をも切り裂いた。
「おおっとぉ? ヤベーヤベー、油断したぜぇ!?」
それでもなお、余裕ぶった笑みを浮かべ続ける。棒読みな“ヤベー”がそれを際立たさせる。
ルークの武器が欠片へと戻ったことで、反撃を受けることは無かった。が、力をほぼ使い果たしたギアはグッタリとし、息を整えるために大きな隙を作っていた。力をかき集めた斬撃の反動か、微かに体が震えているようにも見える。
「あーあ、お気に入りの勝負服だったのにな。破れっちまったじゃねぇか」
ルークは大きな隙のギアにとどめもささず、自身の服の破れを気にしている。その破れをサイで補修すると、それまで浮かべていた笑みが一瞬だけ軽く狂気的に歪んだ。
「ほんとはアイツの力なんぞ借りたくなかったが……」
ルークはサイを使い、マインゴージュとは違うものを成形し始める。
どこか彼方から、何者かのサイが流れ込んできているのが目視できる。――遠くからのクロスオーバーなど、かなりのサイ使いであることが伺いしれる。
「姫さん――クイーンの専売特許」
出来上がったものは、多数の色が入り交じる、緑色が中心として使われたハープであった。