第43話
うずく目を押さえながら、玄は聞いた。
「あのカップケーキにいったい何をしたんだ?」
「あれは……。うん、そのね」
白狐はとまどいつつも、口を開いた。
「ちょっと、実験にね。……ヒカリのカケラを体内に入れるとどうなるかっていうね」
「え……」
何気にマッドサイエンティスト寄りなことをさらっと言った気がされる白狐。
「……まさか、カップケーキの中にヒカリのカケラ入れたとか言わないよな?」
いやな予感がしつつも、玄は聞いた。しかし、案の定--。
「そのまさかなんだよね~」
「テヘッ」とでも言いたそうな雰囲気だ。
玄は口を押さえて、うつむいた。
「胃の中の物、戻していい?」
「ダメ」
「“空”って言われても、どうしようもないじゃん」
もっともなエリーの意見だ。
「結局は振り出しに戻るか……。あーあ、どうすりゃいいんだよ」
銀介はグシャッと髪をかいた。長い銀髪にくせがつく。
その横で、蒼が何かを思い出しかけていた。
「天空公園……。空……。サイ使い……」
「あー。なんか治まってきたかも」
玄は軽く目から手を離し、まばたきをしている。
「顔上げて。目を見せて」
その玄に白狐が顔を近づける。そして、覗き込むと心なしか目が鋭くなった。
「左目が……。あ、いや。なんでもない」
妙に意味深なことを言いかけて、白狐は口をつぐんだ。
「そんな風に切られたら気になるだろ! 言ってくれよ」
「ん……。じゃあ……」
白狐は軽く深呼吸すると言葉を紡いだ。
「左目の瞳孔が細長くなってて、変色してる。俗に言う、オッドアイみたいに」