第42話
白狐が思い出したように、声をあげた。
「あ、私のカバンある? 中にカップケーキあるんだけど」
「ああ、確かこっちに……。これか?」
玄が取り出したのは、綺麗にラッピングされたカップケーキ2つだった。
「そう、それ」
「いいのか? これ……誰かにあげるつもりだったんじゃ?」
どう見ても、プレゼント用のラッピングだ。白狐に似合わないピンクのリボンに、可愛らしいシールまでついている。
「銀介にあげるつもりだったけど……。いいの。食べないともたないでしょ?」
玄は白狐の目を見て、少し考えて、こう言った。
「そうか、分かった。ありがたくもらうよ」
ラッピングを外し、中のカップケーキを1つ白狐に手渡した。自分はもう1つのケーキを口へ運んだ。
(私も食べなきゃ怪しまれるな……。腹くくって食べるか……)
白狐もケーキを口へと運び始めた。
「ありがとう。美味しかったよ」
「カップケーキは作り慣れてるから……」
「え!? 手作りだったのか!?」
お店の物と勘違いするほど、カップケーキは美味しかった。人には意外な才能が隠れている時もある。
(銀介にって……。なんなんだよ……)
普段と変わらない態度を保ちつつ、玄はそう思っていた。
「……ねぇ」
「ん?」
白狐から話しかけてきた。なにか、言いにくそうな表情だ。
「変な感じがしたら、言ってね? 特に……目とか」
「は?」と言おうとしたとき、玄の目が急にうずき始めた。マンガ並みにすごいタイミングと思いつつ、玄は口を開いた。
「タイミングばっちり。めっちゃ、変な感じ」
苦笑いの表情がなんともいえなかった。