第41話
ヴィルーフは口を開いた。
「舞台は整った。残りは役者だけだ。幕はもう開けている」
「それはどうい……」
「伝えることは伝えましたよ。ちなみにこの方は、私ではありませんので」
神が問う前にヴィルーフは霞と消えた。
「というのが、神話のセリフだガ」
神話の本をたたみつつ、ギアはそう言った。
「たしかに似ているな。ちなみに決戦の場はどこだ?」
「それは、確か……」
「う゛……」
白阿修羅が目を覚ました。
「気がついたか?」
黒夜叉の声が聞こえ、白阿修羅はホッとした。
「ここは?」
「分からない。鍵がかかっていることから考えたら…… 敵陣で監禁状態ってとこかな」
黒夜叉の表情が曇っているのが、言葉――言い方から見なくても解る。拘束されているわけではないので、まだマシだが……。白阿修羅――白狐には思い残しがあった。
(どうしよう……。あの実験がまだ終わってない……)
白狐の曇った表情を見てか、黒夜叉――玄が声をかけてきた。
「どうした、白狐? 腹でもへっ……」
言葉を遮るように、腹の虫が鳴いた。玄が恥ずかしそうに頭をかいている。
「なんか、腹減ってきたな。なにか食べ物ないかな?」
あたりはドラマなどでよくある牢屋のような造りだ。二段ベッド以外、物が見えない。
「場所は“空”ガ」
ギアが口にしたのは、みんなの予想を裏切る回答だった。
「そ、空?」
「そうだガ。両サイドのサイ使いが作った場所が、決戦の場に選ばれたガ。……平和の象徴として作られていた“天空公園”が……」