第40話
「銀! ノームだけが帰ってきた!」
エリーは扉を荒々しく開けながら、叫ぶように言い放った。
「でも、何か変なの!」
ノームはぐでっとした様子で、力なく弱弱しく肩で呼吸を繰り返している。
そして目に見える異常として、スピリットとエレメンタルの中間のような――獣人というのがあっているような姿で横たわっていた。
「ノーム、話せるか?」
「だい……じょ……ぶ……だ……」
「無理しなくていいから、覚えているだけ話してくれ」
力なく途切れ途切れなノームの言葉をつなげると、「白阿修羅と黒夜叉を返して欲しくば、役者を連れてこい。幕はもう開けた」という言葉だけが脳裏に残っているという。--正直、何のことだか分からない。
「役者ねぇ……。エキストラでも雇えってか?」
苦笑いしつつ、銀介がつぶやいた。
「役者……。情報が少なすぎるわね。ノーム、本当に他に何か思い出せない? 些細なことでもいいから」
エリーの問いにノームは首を横にふって答えた。その時――
「ただいま戻ったガ」
――ギアが妙に陽気な声を響かせ、部屋へと入ってきた。
「……どうしたガ?」
さすがに張り詰めた雰囲気に気がついたのか、急に声が真面目になった。そしてノームが視界に入ったのか、はたと止まった。
「私達もよくわからないの。帰ってきたノームはこんなんだし。聞こうにもウンディーネが居ないから、この状態から戻してあげられないの。それに……」
エリーの口からノームの言葉を告げられると、ギアの表情が変わった。
「それ…… 神話のセリフのコピーじゃないガ……?」