第38話
「オレはあの名前を捨てた! 今は『王を守る鉄壁の壁』ルークだ!」
そう叫びながら、全力の一撃を加えようとルークは腕を振り上げた。黒夜叉は反射的に目をつぶったが、いくらまとうとも腕は振り下ろされなかった。
「何やってんだ!? 玄!」
名前を呼ばれて目を開けた。そこには、見慣れた後姿。
「――ノーム……」
「何だ? テメェは?」
ルークは押さえられた腕を振りほどこうともせず、そう言った。
「へ。ちょっとわけありでね。こいつに死なれちゃ困るんだ。……玄、白狐にもらったものは試さなくてもいいのか?」
ノームは名乗ろうともせず、玄にそういった。
黒夜叉の腕についているブレスレットが、光を反射して輝いた。
「ありがと、ノーム。忘れてた」
立ち上がり、教えられたとおりにアクセラレータを使い始める。キィィと機械音のような音が響き、アクセラレータが光を放ち始める。
「何だ、それは? ……まぁいい。起死回生の策があるようだが、つうじねぇのはかわらねぇ」
余裕たっぷりのルークに黒夜叉が、攻撃を仕掛ける。さっきより、格段に攻撃速度などが上がっている。それを見てなのか、余裕たっぷりだったルークも顔がこわばった。
「なる、ほどな。能力を、底上げする、アクセラレータか。だが――」
唸りを上げていたアクセラレータは、徐々にその光を弱め、機能を止めた。アクセラレータが止まると、もちろん底上げされていた黒夜叉の能力も元に戻る。
「半端もん渡してきたお友達を恨むことだな」
そのセリフを最後に、黒夜叉の意識は途絶えた。ルークの蹴りを受けて。