第36話
「ウァッ!」
「ほらほら、どうした!? その程度かぁ!?」
顔の3分の1を覆うほどの大きさの仮面を付けた男が、意気揚々と黒夜叉に攻撃を仕掛ける。その速度は速く、武器がなくても当たればそれなりのダメージになりそうなほどだ。
この状況に陥ったのは、ほんの数分前にさかのぼる。
「酸素……少なくなってきてないか?」
「ん……確かに息苦しくなってきてる」
火山ガスを吸い込まないよう、布で口と鼻を覆っているが、その分を差し引いても息しづらいのがはっきり分かるほどだ。幸運なことに、初めの頃のまだ動き回れるほど体力があるときにしかこの地域の生物に出会っていない。この状況で戦いになると、とてもじゃないがまともに戦えない。
「おい……あれ……」
そんな時、黒夜叉の視界に火山ガス対策を何もしていない男が映った。しかも、2人を待っているかのように2人を見据えている。
「あいつ……」
白阿修羅がその男をみて、つぶやいた。
「知り合いか?」
「ぼやけて、よく分からない。知り合いに似てるんけど」
その男がこっちに来いとでも言うように、手を動かした。
頭のぼんやりしている2人は、呼ばれるまま、男のほうへと歩いていった。
「久しぶり。懐かしいね。……白狐?」
そういいながら、にっこりと笑いかける。
「その声……」
声を聞き、白狐が思い出したように声を上げた。しかし、それをさえぎるように男が口を開いた。
「今はルークっつーんだ。悪いけどさ、ちょっと頼まれごとがあってね。……死んでくれねぇ?」