第34話
「ただいま。異常なし」
黒夜叉がワープ装置片手に帰ってきた。白阿修羅に装置を返す。
「私が作ったんだし、あったりまえ!」
にっと笑うと、机の上のブレスレットのようなものを黒夜叉に渡した。黒夜叉はそれを手首に付けて全体を確認する。
「どう? いってたのって、こんな感じ?」
「……うん。デザインはあってる。性能確認したら、感想言えばいいんだよね」
「ああ。頼むわ」
ブレスレットは光を反射して黒く光った。なんとも白阿修羅らしい漢っぽいデザイン……ではなく、女性が使っていてもおかしくないような、かっこかわいいデザインとなっている。
「コスプレにも使えるし、いいってこと! にしても、再現上手いなぁ……。これで、アクセラレータの性能入ってんだろ?」
“アクセラレータ”これは本来IT用語のひとつだ。コンピュータなどの特定の機能や処理能力を向上させるハードウェアやソフトウェアのことだ。新たな機能を追加することもあるが、すでにある機能の性能向上をはかる点に着目した語だそうだ。
これはサイの精度などを向上させる機能をつけたためアクセラレータと名づけられた。
「ああ。貸してもらった漫画見ながらやってみた。あれって結構面白いね」
「お! お前もはまった?」
うれしそうに黒夜叉が顔を輝かせる。白阿修羅は慌てて否定をした。
「誰が!? でも、しっかり読んでみようかな……」
本音がポロッとでてしまった。
(そうだ、玄に続き借りよう)
「あのさ…… あ」
ふたりして同時に口を開き、ちょっと気まずくなる。先に口を開いたのは白阿修羅だ。
「は、早めに性能確認してね」
「お、おう。じゃあ、オレ行くからな」
思ったことと別のことを思わず言ってしまい、顔を背ける。白阿修羅はそっと離れていく足音を聞きながら、思わず黒夜叉のことを考えていた。