第30話
意識が戻った私が見たものは、虹色に輝く巨鳥と主の姿。巨鳥のせいか、いつもと雰囲気の違う主。
「……」
「!……」
何か会話しているようだが、二人が何を話しているのか聞き取れない。かろうじて聞き取れたのは、会話の最後だと思われる主の言葉。
「消えろ」
その言葉をきっかけに、巨鳥が動き出した。きらめく体を大きく動かして、敵へと向かっていく。
――そこで、私の意識は再び途絶えた。
「どうして……?」
「……別に。疲れただけだ」
そういって、敵の足の辺りのサイを消した。いや、“消えた”といってもいいのかもしれない。この会話の前の出来事は、よく分からない。止めを刺そうと動いたはずの巨鳥が、クイーンの目の前で掻き消えるように霞と消えた。平然を装っているが、内心動揺している。太陽の光が、サイの粒子に反射してきらきらと輝いたことが頭に残っている。
「力の差が分かっただろ? 分かったらさっさ……と……行……け……」
そういうと、蒼は力を失ったように倒れた。
「蒼! 痛!」
動かない体に喝を入れて、蒼の元に移動した銀介はキッとクイーンをにらんだ。当のクイーンはやれやれと肩をすくめると、背を向けてどこかに歩いていった。「強大な力の代償は大きいわよ」そういい残して。
「ウンディーネ」
呼びかけで意識を取り戻した彼女は、ゆっくりと立ち上がった。
「無理するなよ」
「大丈夫です。大丈夫…… そんなことよりも……」
「ん?」
「あ、いや、なんでもないです。気にしないでください」
ウンディーネの手遅れかもしれないという思いは、知らず知らずのうちに大きくなっていた。