第28話
意識も飛んで、微かに2人が戦っている音だけが妙に頭に響いていた。その音もだんだんムチの音だけが聞こえるようになってきていた。
「く……。か……はっ……」
「うふふ。もう限界でしょ? 動きが鈍っているわよ」
2人はその長い髪を風になびかせていた。男のほうは、すでに体力が尽きたようだった。距離をとり、息を落ち着かせる。しびれる右手を押さえて、周りの状況を確認する。
ウンディーネはクイーンの近くで倒れたままで、蒼は木に体を預けたままだ。2人とも意識は戻りそうに無い。敵は笑みを浮かべながら待っている。
しばらく経つと、同じ表情のまま銀介のほうに歩いてきた。ムチを黒く変え、ゆっくりと楽しそうに近づいてくる。
「やっぱり、最後はメインの色で締めるべきでしょ? ウフフッ」
クイーンが止めをさそうとした時、2人の間に何者かが割り込んだ。その何者かは、青い目でその青い髪の間から敵をにらみつけていた。
「邪魔よ。あたし、弱いやつは嫌いなの」
「……」
「何? 聞こえないわよ。もっと、はっきり言いなさいっ!!」
黒いムチが空を切り裂いた。が、途中で止められた。
「俺の仲間に、手ェ出すんじゃねぇよ……。躊躇無しに切り裂くぞ?」
その声はいつもの蒼のようで、いつもの蒼ではない口調だった。
そして、黒いムチは蒼がとめている所から消えていった。それと同時に、黒いサイが蒼の腕を覆った。いつもの蒼の武器ではなく、指のほうで5つに分かれていた。完全に覆われたあと、今度は赤色で模様が刻まれた。
「来いよ。相手してやるぞ? 強いやつは好きだろ?」
そういうと蒼は、蒼らしくない笑みを浮かべた。