第19話
「はぁ。疲れた」
前の席に座っている九火を見た。6時間目(最後の授業)の途中(といっても、開始10分ぐらい)から眠り続けている。
「ZZZ…… ブツブツ……」
「? 寝言?」
「ZZZ…… セリャフィミュ……」
セリャフィミュ? 熾天使の事か? それにしても……
「セラフィムが出てくる夢って、いったいどんなんだろう?」
考えていると、とんとんと背中をたたかれた。振り返ると、ウンディーネだった。
「蒼、銀介にちょっと遅くなるって言っといて。お願いね」
放課後
ウンディーネは、校舎の屋根の上にいた。
「遅い…… サラマンダー」
足音もなく後ろから近づいてきた気配の主に、振り返らずに言った。
「悪ぃ」
その返事を聞き、本題に入る。
「さっきの様子じゃ、主に正体を明かしてはいないようね。なぜなの?」
「あいつは、単純だからな。自惚れてしまう。そして、未来を知りたがる。お前だって、すべてを教えたわけではないだろう? 偽りでつなぎ合わせている。特に、あいつは呪われる運命だからな」
「そうね…… でも、もう遅いのかもしれない。私に肩代わりできるのかしら……」
後ろを向きサラマンダーは、歩きながら言った。
「『運命は自分が選んでいくもの』お前が言った言葉だろ? いい選択をすれば済む話じゃないか。じゃあな。そろそろ行かねーと、九火がおきちまう」
ひらひらと手を振り、サラマンダーは屋上から飛び降りた。