守ります‼︎
皆様初めまして。私はクランスベルツ公爵家にお仕えしておりますメイドのウルミナ(18歳)と申します。
3年前まで私の実家は伯爵の地位をいただいておりましたが、没落しただの平民となってしまいました。そして、途方にくれる私と10歳年下の妹アリシアを救って下さったのが現クランスベルツ公爵のアルジェント・フォン・クランスベルツ様でした。
かの方は、私をメイドとして稀に見る高賃金で雇って下さいました。しかし、ただのメイドは表の顔で、実は裏では公爵家直轄諜報部隊のリーダーなんて事をしています。
公爵様は、私に諜報などという危ない事をさせたくないようですが、私はこの仕事を割と気に入っております。
運の良い事に私には、魔法と武術に適性があったらしく、どのような難解な仕事も簡単にこなせてしまうので、だんだん楽しくなって来てしまったんですよね〜これが。
そうこうするうちに気付けば3年もの時間が経っていました。この3年の内に変わった事が幾つかあります。
まず公爵家のメイドとなって半年くらい経って、公爵様に命じられてお名前で呼ぶ事を義務付けられました。
次に、私公爵様のお手付きになりました。毎日それはそれは愛していただいています。
最後に、アル様(公爵様の事です)が王家のお姫様と婚約なさいました。
それとこれはまだ妹にしか言っていないのですが、まずい事に、私アル様のお子を妊娠してしまいました。それも双子だそうです。
一人ならお腹が目立つ様になるのが遅いですからゆっくり逃げる準備が出来るのですが、なりしろ双子ですからすぐにお腹が膨らんでしまいます。
なので私、アル様が結婚式の準備の為にお屋敷を留守にされた頃合いを見計らって、昨日の夜に執事長様とメイド長様に辞職届けを出して来ました。辞める理由は、アル様が結婚してしまわれるのを側で見つづけるのは辛いからと言っておきました。お二人ともとても同情して下さって、沢山の退職金を持たせて下さいました。
今まで貯めてきたお給料と合わせれば子供と達と妹を学校に通わせてあげる位の事は出来そうです。
まだ外は薄暗い時間帯ですが、そんな事にかまってられません。昨日纏めた荷物を持ってさっさとお屋敷の使用人部屋を妹と共に出ます。
「おねいちゃん、これから頑張ろうね‼︎」
「えぇ、これから忙しくなるから色々手伝ってちょうだいね⁇」
「勿論だよ‼︎早く姪っ子か甥っ子に会いたいなぁ〜‼︎」
「ふふふ、そうね…。私も早く会いたいわ」
行く先は、私の実家のある街の三つ向こうの港町シェリルです。とても美しい街で、港町ですから沢山の情報が集まってくるので、逃亡生活にはうってつけです‼︎
アル様、もし私の妊娠に気付いて追い掛けて来られるとしても、諜報部隊のリーダーを簡単に捕まえられると思わないで下さいね⁇