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でんぱ  作者: 海溝 浅薄
タイトル
7/18

あるために

 私の両親がゾンビになった。町内会の旅行に出かけた先で噛まれたらしい。全く、傍迷惑な話である。その話は隣近所どころか町内中に半日と経たないうちに広まり、結果、私は家から出ることができなくなってしまった。電話口の向こうへその理由を問うと、噛まれているかどうか分からないから、という納得のいかない答えが返ってきた。私は噛まれていないと声を荒げて反論したが、相手方は聞く耳を持たないどころか、数時間後に我が家を焼き払うと声高々に予告して、電話は荒々しく切られてしまった。


 さて困るのは私である。元凶とも言える両親は帰ってきた時にゾンビであるとすぐさま気づいて頭を吹き飛ばし、念のため全身を分断したから心配はないだろうが、それでもこの家は焼かれてしまう。後に残るのは善良な人間の丸焼きのみ。何としてもそれだけは回避したい。ならばどうすれば良いか。簡単なことだ。逃げればいい。


 そうして、私は逃げた。が、すぐに見つかり追われた。追われて逃げて、辿り着いた先が学校の屋上だった。私はフェンスの外側に立ち、飛び降りることを仄めかした。しかし地上の人間たちは私を止めようとはせず、今か今かと私の墜落を待っていた。その中にはかつて私の友人だった者もおり、私は内心、寂しくなった。

 どうしたものか、と思っていると、奴らの中の一人が隣に立っていた誰かに噛みついた。どうやらゾンビが一体、紛れ込んでいたらしい。ざまあみろである。実際に私はざまあみやがれと言って、小心者な自分の口からこれほど汚い言葉が飛び出すことに驚いた。人間、僅かな時間で変わるものである。


 そんなこんなで地上に集まっていた者たちは一人残らずゾンビと化した。遠くを眺めるとそこかしこで火事やら事故やらが起こっていた。どうやらゾンビ化はこの町全体に広まっているらしい。その発端はもしかすれば私の両親なのかもしれない。私はほんの少しだけ申し訳ないと感じながら、重心を前に傾けた。

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