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水溜まり
もう疲れた、と力無く呟いて、友人は水溜まりに飛び込んだ。私が見ている前で友人は沈み、そのまま浮き上がってくることはなかった。後日、様子を見に行ってみると水溜りは乾いていて、そこに友人の姿は見当たらなかった。それから、友人とは会っていない。
あの日から幾ばくかの年月が過ぎ、私もとうとう疲れてしまった。身体を動かすこともままならず、少し進んでまた休みの繰り返しだった。へたり込み、焦点の合わない私を、道行く人の誰もが避けた。
今日は朝から雨が降り続いている。探すまでもなく、水溜まりはそこかしこに点在している。私は何も考えず、水溜まりに入るだけで良い。それだけで、全てが終わる。
目の前にできていた、他のものより一際大きな水溜まりに向かって這いずり、ゆっくりと沈んでいく。心地良い、と感じたのも束の間、私の上を自動車が通り、私を散らして過ぎ去った。道行く人が飛び散る私を避け、顰め面を浮かべ、また、去っていく。
雨はしばらく、止みそうにない。私はただただ痛みを堪え、自身の蒸発を切望する。