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顔
友人が、顔をおくれと私に言った。友人には出会った頃から口以外に顔がなく、私自身もそのことを常々不憫だと思っていたので、片目を抉って友人に渡した。友人は礼を言うと渡された目を咀嚼し、飲み込んだ。
するとどうだろう。友人の顔には私の目が現れたではないか。私は喜び、友人の手を取り喜びを分かち合おうとしたが、友人はその手を乱暴に振り払い、次は鼻だと冷たく吐き捨てた。
それから私は鼻を削ぎ、友人に言われるがままに自らの顔を次々と友人に渡していった。友人は私の顔を手に入れ、私は口以外の顔を失った。それ以来、友人の気配は感じられない。友人がどこへ行ったのか、私には全く分からないが、顔を失くした私が今できるのは、ただただ、次の友人を待ち、顔を手に入れることを望むことだけである。