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箱
道端に、一つの箱が落ちていた。振ればキャラメルが出てくるような、小さな箱。
私はそれを拾って眺めた。特にこれといった面白みは無かったのだけれど、私は箱を妙に気に入り、上着のポケットに放って持ち帰った。
その日の晩のことである。独り寂しく炒飯を食べつつ、拾った箱を弄んでいると、箱が手から滑り落ち、テーブルの下に転がった。私はそれを拾おうとして、落ちた先を覗き込み、そうして、気を失った。
数分後、私は意識を取り戻し、炒飯を食べ、何事も無かったかのように一日を終えた。
ただ、それだけの話である。私は何も見ていない。見ていたとして、それを誰かに言うつもりも無い。私は箱を拾って失くした。たった、それだけの話である。