【第2章 あはれてふ 心の奥ぞ けふ知られぬ】全年齢版④
※ムーンライトノベルズにてR-18完全版も公開しております。
【第2章 第4話】
「あぁ……! この匂い……!! そこにいたのね。私の、愛しい子……!」
姑獲鳥の視界に、柊が入ってしまった。
「今度は逃がさないわ。さぁ……影たち。あの子を、連れてきなさい」
姑獲鳥の指示に応じるように、影鬼たちが蠢き、重なり合い、やがて、ひとつの悍ましい形へと変容していく。
「ギャアアアア……」
苦しげに唸る声を上げながら、歪なそれは柊を目掛けて飛びかかり、大きく腕を振り上げた。
「柊!! 危ない!!」
考えるより先に、体が動いていた。全力で飛び出し、状況を飲み込めず立ちすくむ柊の前へと割って入る。
「ぐっ……!!」
衝撃。柊ごと後方へ弾き飛ばされ、二人は地面に重なるように倒れ込んだ。
「なんなんだ……これ……! くそ……!!」
戸惑う柊に視線を向ける。打撲と擦り傷。口の端が切れている。それでも……致命傷は免れた。……間に合った。
「おい……ちょっと待て……」
柊が、俺の顔を凝視する。
「もしかして……お前……蓮なのか……!?」
その言葉で、ようやく気づいた。さっきの一撃を顔面で受けたせいだ。呪力は剥がれ、仮面の一部が砕け、半分だけ、素顔が露出している。
「どういうことだよ……! 何してんだ……!!」
柊が俺の腕を掴み、答えを求めてくる。その様子を、姑獲鳥が愉しげに見つめていた。
「その匂い……。あの時、喰らった男と似ているわ……」
恍惚とした色が、瞳に宿る。
「忘れられない、あの感触……。もっと……もっとちょうだい……」
悲しみを宿していた目が、歪んだ欲望に塗り替えられていく。
「お取り込み中、悪ぃが……」
朱雀の声が、低く響いた。
「連続で喰らえば、もたねぇぞ。構えろ。覚悟を決めろ……蓮」
歯を食いしばり、立ち上がる。
「ごめん……柊。あとで必ず説明する……今は離れて。
隠れて……必ず、守るから」
「蓮が……俺を守る……?」
柊の声が、震える。
「……違う。守りたいのは、俺の方なのに……!!」
――ドクン。
柊の体が、微かに跳ねた。次の瞬間、蓮の体から溢れ出した青い光が、意思とは無関係に、柊の胸元へと、吸い寄せられるように集まっていく。
再び、影鬼が迫ってくる。
「……その身、すべて預ける覚悟はあるか。ワシの名を呼べ。構えよ」
青い光の中心から、低く落ち着いた声が響いた。
「蓮……おれが、守る」
「……式神外装!玄武!!」
玄武(玄武)
蓮の中に眠っていたもう一柱の式神




