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【第2章 あはれてふ 心の奥ぞ けふ知られぬ】全年齢版③

※ムーンライトノベルズにてR-18完全版も公開しております。

【第2章 第3話】


「あぁ……あら?アタシの……アタシの子は、どこ……?」


 姑獲鳥は辺りを見回し、焦点の合わない目のまま、笑っていた。


「懐かしくて……美味しそうな、あの子は……?」


「貴方が隠したのね……?それなら……お仕置きしなくちゃ……」


 姑獲鳥が両腕を広げる。すると、足元で蠢いていた黒い影のような鬼たちが、四方から一斉にこちらへ飛びかかってきた。


「――っ!」


 凄まじい速さ。かわしきれず、右足にしがみつかれる。ずしり、と重さが増す。力が抜ける感覚に陥る。


「すぐに振り払え! そいつら、取り憑いたところから呪力を吸ってやがる! 距離を取れ、まとめて来させるな!」


「くっそ……! 数が多すぎる……!」


 歯を食いしばり、力任せに振り払う。


「朱雀! 呪符だ!」


 呪力を込めた呪符を、周囲へ放つ。触れた瞬間、呪符が燃え上がり、影鬼たちは悲鳴もなく、砂へと崩れ落ちた。


「いいじゃねぇか。道具の扱いにも、だいぶ慣れてきたな」


「なにを……したぁ……!」


 姑獲鳥が絶叫する。


「アタシの……大事なものに……!! 生かしては、おけぬ……あああああ!!」


 空気が震えた。衝撃が全身を叩き、ビリビリとした痛みが走る。再び、体が重くなる。


「わかってきたぜ」


 朱雀が低く唸る。


「姑獲鳥は、まずこちらの能力を削ぐ。その上で、影鬼を取り憑かせて呪力を奪う……」


「つまり、デバフと遠距離攻撃かよ……!最悪だな……この場所じゃ、やりづらすぎる!」


 周囲を見渡す。


「……外に出す。祭祀刀、全力だ!」


 祭祀刀を構え、呪力を一気に流し込み炎を纏わせる。


「業火……一閃!!」


 炎が走る。


 初めて鬼を斬ったときよりも、速く、重く、熱い一撃。


 壁ごと斬り裂き、姑獲鳥の身体を吹き飛ばして、屋外へ叩き出す。


「痛い……イタイ……母に……刃物を向けるなんて……!」


 叫びとは裏腹に、切り裂いたはずの身体に黒煙がまとわりつき、傷はみるみる塞がっていく。


「嘘だろ……! 今の、かなり手応えあったぞ……!」


「あぁ。今の一撃は悪くなかった」


 朱雀が唸る。


「だが……決定打にはならねぇ。……何かが足りねぇ。力じゃない。別の何かだ……」


⸻⸻


「小泉さん! 柊さん! 早く、こちらです!」


 施設長の渡辺さんが、必死に手を振る。ただならぬ音や怪物の悲鳴、柊と小泉さんの表情から非常事態だと気づいてくれている。


「さぁ、早く中へ! 警察には妻が連絡してくれてます。もう少しの辛抱です!」


 柊は、拳を強く握った。


「……小泉さん、すみません。俺……やっぱり、蓮を一人にはできません。子どものころ、約束したんです。……絶対に、あいつを守るって。今も、そう思っています」


「柊くん、待ちなさい!!」


 小泉さんを玄関へ押し込み、強引に扉を閉める。振り返らず、そのまま走り出した。


⸻⸻


「……蓮!! どこだ!!」


 遠くから、柊の声が響く。


「あいつ……まさか、戻ってきやがったのか!」


 屋外へ出た柊の視界に映ったのは……崩れた壁。黒煙。黒い影。


 そして――


「……なんだよ、これ……」


 息を呑む。


「化け物と……赤い……ヒーロー……?」


 視線を走らせる。


「……蓮は……?」


 愛しい親友の姿が、どこにもなかった。

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