【第1章 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る】全年齢版①
はじめまして。
藤原麻呂眉と申します。
普段は実写BLドラマなどをたしなみ、日々の栄養として啜りながら生きております。
2026年1月1日より、初めて小説の執筆を始めました。
とあるBLとは無関係な特撮ヒーロー作品を視聴していた際、
「バディものがほしい……バディものが読みたい……!」
という欲求に突き動かされたのが、本作を書くきっかけです。
拙い文章や稚拙な表現も多々あるかと思いますが、
温かい目で見守っていただけましたら幸いです。
本作は、陰陽師のエッセンスをお借りした
BL × 和風ファンタジー × バトル作品となっております。
初回投稿では、
第1章 第1話〜第3話、ならびに第2章 第1話までを公開予定です。
その後は、毎週火曜日・金曜日更新を予定しております。
全8章構成となります。
なお、本作は
小説家になろうでは全年齢版、
ムーンライトノベルズではR-18完全版を投稿予定です。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
隠すつもりだった。
でも、想いはもう、
外に出てしまっていた。
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【第1章 第1話】
『――それでは次のニュースです。
県内で発生している連続行方不明事件の続報です』
テレビから、物騒な話題が流れてくる。
ここ数ヶ月、この辺りを騒がせている事件だ。
『警察の捜査も虚しく、有料な手がかりは見つかっていません』
日に日に増える行方不明者の数に、一時は街中が自粛ムードに包まれていた。
だが、それにも人は慣れてしまうのか……
「おい、蓮。急で悪いんだけど、三丁目のクラブ《Antinomie》まで配達頼めるか」
俺の名前を呼んだのは、吉岡酒店の2代目店主であり、雇い主である吉岡憲司さんだ。元レスリング選手らしく、いつもTシャツの裾からはちきれんばかりの上腕二頭筋を覗かせている。
吉岡酒店は、三階建て住宅の一階が店舗になっており、三階に憲司さんが住んでいる。お父様が他界された後、空いた二階の住居に住み込みでバイトさせてもらって、もう一年になる。
「はい! すぐ行ってきますね」
「おう、悪いな。配達終わったら、そのまま上がっていいぞ。それと…最近は物騒な話題も多い。気をつけるんだぞ」
酒箱を配達用のバイクに積み、配達に向かう。
例の事件の影響でしばらく注文は減っていたが……どうやら、この街も少しずつ“日常”を取り戻し始めている。
「こんばんは。吉岡酒店です。
ご注文の商品、お持ちしましたー!」
最初に出迎えてくれたのは、クラブ《Antinomie》のママ、穴田グローリーさんだ。
180cmを超える高身長と年齢不詳の圧倒的存在感。綺麗な着物を纏い、堂々とした佇まいと繊細な所作が綺麗だ。
「あら、蓮ちゃーーん! 今日もかわいいわね! どう? そろそろうちで働いてみる気になった? なんならアタシの家に住み込みだっていいのよ」
穴田ママは今日も意味深で豪快だ。
ここ《Antinomie》は、男女の枠に収まらないスタッフたちがお酒を提供しているバーだ。
ママはスタッフたちからの人望が熱く、みんなの居場所になっている。
「いやぁ……俺にはまだ大人の世界は早そうで…あと酒屋の仕事も結構好きなんですよ」
仕事が向いていると思うのは事実だ。
……けれど、ここでは働けない。
この辺りに長く居ると、俺はときどき“感情が流れ込んでくる”ような、妙な状態に陥る。
世界の音が静かになり、喜怒哀楽の入り混じった想いが、一気に胸へ流れ込んでくる。
一度そうなると、しばらくまともに動けなくなる。
まるで、自分の中の何かが、制御を失ったみたいに。
「もう。また振られちゃったわ。でも、気が変わったらいつでも言ってちょうだいね」
穴田ママは冗談めかして笑い――声を落とす。
「そういえば聞いた? 向かいのガールズバーの子たち。最近、急に人が変わったみたいに愛想がなくなったり、出勤しなくなったりして……しばらく店を休むんですって」
テレビのニュースが頭をよぎる。
「物騒な事件も多いでしょう? 本当に怖いわね。……蓮ちゃんも気をつけるのよ」
「あ、そういえば。常連さんからいただいたフルーツの盛り合わせなんだけど、よかったら蓮ちゃん持って帰って!それじゃあ、またよろしくね。あ、個人的に会いに来てくれてもいいのよ?」
俺の手を取り、優しく撫でるようにして色とりどりのフルーツが入ったバスケットを渡してくる。
「こんな高そうなフルーツ、もらっちゃっていいんすか?いつもありがとうございます! 穴田ママも気をつけてくださいね!」
店を出てスマホを見と、時刻は二一時を回っていた。
吉岡さんは「終わったら上がっていい」と言っていた。本当ならこのまま帰るだけ。……だけど今日は、思いがけず“良いお土産”がある。俺はそれをバイクに載せ、少し寄り道をすることにした。
向かった先は《ひまわりの里》という養護施設だ。俺は三歳から十九歳まで、ここで生活していた。入所前の記憶は、名前以外覚えていない。道端で倒れていたところを保護され、この施設に受け入れられた――らしい。
そこらは施設長の姓をもらって“渡辺 廉”と名乗っている。
渡辺さんをはじめ、スタッフのみんなは優しくて、ここは俺にとって「家」と呼べる場所だった。一緒に育った仲間がいたから、寂しさも半分で済んだ。
「蓮……? どうした。こんな時間に」
声をかけてきたのは“渡辺 柊”だ。
俺と同い年で、一緒に育った幼馴染。入所は俺より二年早い。同じく渡辺姓をもらった。
柊は孤児院に残り、住み込みで手伝いをしている。
――それが彼なりの“恩返し”。
「よお、柊! いきなりごめんな。実はさ、これもらってさ……よかったら、みんなで食べてくれよ」
「……こんな上等なもの、いいのか? みんな、喜ぶよ」
口元に柔らかな笑みが浮かぶ。
整った顔立ちにその笑顔。
ほんと、反則だ。
そして……
俺のことを気にする視線が、やけに胸に残る。
「でもな。こんな時間に来るのは、よくないんじゃない? 変なニュースが多いから。……気をつけないと。今夜は久しぶりに泊まっていったらどう?」
「んー、ごめん。泊まりたいけど、今日は配達用のバイクなんだよ。また、ちゃんと会いに来るからさ」
「じゃあ……俺が送っていく」
柊の目に、心配と……少しの寂しさが滲む。
「いいって! 俺だってもう大人なんだから。それじゃ、おやすみ! またな!」
柊の不満そうな顔を横目に、《ひまわりの里》を後にする。
施設を出た瞬間、夜風が少し冷たく感じた。さっきまで温かかった胸の奥が、ほんの少しだけざわつく。
気づけば、夜は少し深くなっていた。
吉岡酒店への帰路につく。
信号が赤に変わり、バイクを停めた、そのとき――
「きゃあああああっ! だ、だれか!!」
すぐ近くから女性の悲鳴。
俺はバイクを路肩に止め、声の方へ走り出した。
渡辺 蓮
本作の主人公。20歳。
19歳まで養護施設《ひまわりの里》で育つ。
現在は吉岡酒店でアルバイトを始めて1年ほどになる。
渡辺 柊
蓮の親友。20歳。
蓮と同じく《ひまわりの里》で育つ。
※本編を読むうえでは必須ではない、
人物の基本設定のみの補足となります。




