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あなた方は、切られていません

拙作、備蓄米・飼料米・MA米制度改革もよろしくお願いします。

自民党本部・小会議室。

ドアが閉まり、ロック音が鳴る。


参議院議員・田代(JA出身)は、椅子に深く座り、腕を組んだまま動かない。

顔色は良くない。


向かいには、政調会長の城島と、官邸戦略室長の結城。


沈黙が続く。


「備蓄米の件、ありがとうございました」


結城が、先に頭を下げた。


「まずは……備蓄米制度の件、全面的に協力いただき、感謝しています」


田代は、無表情のまま言った。


「……それで?」


城島が続ける。


「現場調整、農水族の説得、農協内部の根回し。

正直、あれがなければ、通りませんでした」


田代は、鼻で笑った。


「で?」


「なのに、この仕打ちか?」


田代が、資料を机に叩きつけた。


「この制度、見ましたよ」


「衆議院比例で、JA系候補は出さない“自主規制”?」


「参議院では完全比例?」


「組織票の意味が、ほぼ消える」


彼は、城島を睨んだ。


「……なのに、この仕打ちか?」


空気が、張りつめる。


「切っていません」


城島は、即答した。


「切っていません」


田代:

「ふざけるな」


「我々の“影響力”を切ってるだろう」


結城が、静かに言った。


「“見え方”を変えています」


「あなた方は、嫌われすぎた」


田代が、目を細める。


「……何だと?」


城島が、淡々と続けた。


「正直に言います」


「JA、医師会、建設、郵政。

“組織”は、もう国民から好かれていません」


田代:

「それが理由か?」


結城:

「それが現実です」


「制度は、あなた方を守ります」


田代:

「どこがだ」


結城が、資料を差し出した。


「参議院です」


「地方票の読み替え」


「都道府県代表枠」


「事前割合指定」


「複数県またぎ指定」


田代は、黙って見た。


城島:

「これは、“地方基盤を持つ人間”のための制度です」


「都市型ポピュリズムから、守る」


「組織票は、もう武器ではない」


田代:

「我々の票が、もう要らないと言うのか」


結城:

「“票”ではありません」


「敵になってほしくない」


沈黙。


城島が続けた。


「これからの政治で一番危険なのは、“分かりやすい敵”です」


「あなた方は、分かりやす過ぎる」


「衆議院は“顔”の選挙になる」


田代:

「だから衆院から追い出すのか?」


城島:

「衆院は“顔”です」


「イメージです」


「説明責任です」


「組織の匂いが強い人間は、逆効果になる」


田代:

「……それで、参院に押し込める?」


結城:

「“守る”です」


「備蓄米は、偶然じゃない」


田代:

「……あの制度は?」


結城:

「偶然ではありません」


「我々は、農業票を切る気はない」


「ただ、“表に出さない”だけです」


田代は、黙った。


「あなたは落ちません」


城島が、静かに言った。


「田代さん」


「この制度で、あなたは落ちません」


「むしろ、安定します」


「全国比例で名前が売れていない連中より、地方読み替え枠のあなたの方が有利です」


田代:

「……」


「これは“表舞台”からの撤退だ」


田代:

「要するに……」


「我々は、“表”から消える」


結城:

「そうです」


「でも、“力”は消えません」


「あなた方が怒るのは、分かっています」


城島:

「だから、今日ここに呼びました」


「あなた方が裏切られたと感じるのは、当然です」


田代:

「当然だろう」


「しかし」


結城が、はっきり言った。


「このまま行けば、あなた方は“嫌われたまま”消えます」


「今回の制度は、“見えなくする”ことで、生き残らせます」


田代は、言葉を失った。


「利用されていると?」


田代:

「つまり……」


「我々は、利用されている?」


城島:

「政治です」


「最後のカード」


田代:

「……我々が反対したら?」


沈黙。


結城:

「制度は通ります」


城島:

「ただし」


「あなた方は、“敵”になります」


田代の目が、わずかに揺れた。


「分かっていて、飲め」


城島:

「この話が一番残酷なのは」


「あなた方が、“正しく怒っている”ことです」


「でも」


「それでも、飲んでほしい」


「分かった」


長い沈黙のあと。


田代が、深く息を吐いた。


「……分かった」


城島と結城が、顔を上げる。


「だが、忘れるな」


田代:

「我々は、忘れない」


「備蓄米のとき、誰が汗をかいたか」


「誰が現場で殴られたか」


結城:

「……はい」


「裏切られたと思っている」


田代:

「今でもな」


城島:

「分かっています」


エピローグ


田代が部屋を出た後。


結城が言った。


「……危なかったですね」


城島:

「いや」


「通った」


結城:

「切らずに、殺さずに、黙らせた」


城島:

「それが一番、政治的に難しい」

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