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友達百人

「……はじめ君、友達って何なんだろう」

覚君が寂しそうに笑った。


……


「朝ごはんできたわよ」

と母さんの声が聞こえる。


夢か……でもリアルな夢だった。


俺はスマホを確認する。

7月20日で、新聞社も、ポータルサイトの日付も、そしてテレビ番組も7月20日だった。

俺は宿題を見る。

宿題はしていない。

俺は財布を見る。

財布の中身も7月20日時点の金額、5800円だった。

同じだ。


俺は父さんに宿題と爺ちゃんの家の事を確認して、宿題を始める。

そして爺ちゃん家に……

今回も58,000円だった。

俺は急ぎ家に戻る。

次は純ちゃん家に行き、蚊を撃退。

そして茜ちゃん家に行き、告白し、地震発生し引越し回避。

モデル君に連絡を取り、家へ行く。

これでフラグは折れた。


次は覚君だ。


・28日頃に学校に行きたくないって言い出し、家出。

・山中で遺体で見つかる。


どういう事なのだろう。

これまでの状況を見ていると、みんな何らかの悩みを抱えている。

そしてそれが間接的な原因となり亡くなった。

そして俺がその間接的な原因を取り除くと、死は回避された。

つまり、死亡フラグは悩み。しかも間接的な原因になる。

しかし、なぜなのだろう。

なぜ俺が選ばれた。

うん、選ばれたのか?

いや……違うかもしれない。

もしかすると、こういうループってのは、案外と日常的にあって、放置することで、みんなやり過ごしているのかもしれない。

俺だけ、死亡フラグだと言って、それを折ろうとしているのかもしれない。

しかしそれなら、なぜみんなループがあるって言わない。

なぜだろう。

俺はなぜ言わないのだろう。

俺の場合、まず頭がおかしくなったと思われるのが嫌だということだ。

それに信じてもらえないと思うからだ。

しかし小説や物語の世界では、タイムループものは定番だ。

もしかすると、タイムループが実際にあるから、書く人が多いのかもしれない。

じゃあ、覚君を放置するか。

いや、そんな事をして、タイムループが終わったとしても、見捨てたことでタイムループ終了サインみたいなのは、気分が悪い。

今回もへし折らせてもらう。


まずは覚君に連絡を取ろう。

覚君とは、なんで連絡を取り合っていたっけ。

そうだ、トランシーバーだ。

俺は机の引き出しの奥から、トランシーバーを取り出した。

動かない。電池切れか。

俺はトランシーバーの電池の蓋を開ける。

なにこれ、錆びて、なんか変な液がついてる。


俺は下に降りる。

「ねぇ母さん。こんなんなってるんだけど、これなに?」

俺は言った。


「……これは液漏れだね」

母さんは言った。


「液漏れ?」

俺は言った。


「そう」

母さんは言った。


「電池入れても使えないかな」

俺は言った。


「たぶんね」

母さんは言った。


「わかった」

俺は言った。


「念のため、使わない電気器具の電池は抜いておくんだよ。私も家の中探して抜いておくから」

母さんは言った。


「わかった」

俺は言った。


……


俺は覚君との連絡手段を考え始める。

なんで……連絡取ってたっけ。

まぁいい、家に直接行こう。


俺は覚君の家に向かう。

覚君の家の近所は再開発があったらしく、当時の面影がまったくない。

また迷子か……。

と思っていたら、案外すんなりと見つかった。


(ぴーんぽーん)


「はい」

男が言った。


「あの、小学校で一緒だった、はじめと言いますが、覚君いらっしゃいますか?」

俺が言った。


「どういう御用件でしょうか?」

男が言った。


どう答えたらいいのだろうか?


「会いたくなったでは、ダメですか?」

俺が言った。


「それでいいよ。ひさしぶり。はじめ君」

男が言った。


「覚君だったんだ。緊張したよ」

俺が言った。


「ちょっと待って」

覚君が言った。


玄関のドアが開く。


「どうぞ。上がって」

覚君が言った。


俺は覚君の部屋に通される。


覚君の部屋に入ると、無数の蝶が目に飛び込んできた。


「うわ」

俺が言った。


「これは蝶の標本だよ」

覚君が言った。


「あぁ。覚君、昆虫が好きだもんね」

俺が言った。


「昆虫が好きなんじゃない。昆虫綱チョウ目、そしてアゲハチョウ科が限定で好きなんだ」

覚君が言った。


「どんなやつ」

俺が言った。


「大型でひらひら飛ぶのが特徴の蝶だよ。いわゆるわかりやすい蝶ね」

覚君が言った。


「……ということは、蛾っぽくない奴ね」

俺が言った。


「まぁそんな感じだね」

覚君が言った。


「そっか。なんか元気そうだね。悩みもなさそうだし……」

俺が言った。


「そんなことないよ。悩みはあるよ」

覚君が言った。


「そうなんだ。どんなこと?」

俺が言った。


覚君は、何も答えずに、話題を変えた。

触れられたくはなかったのだろう。

それでもいいと、俺は覚君と話を続ける。

そして日も暮れ、帰ろうとした時。


「友達100人できるかなって歌あるでしょ。頑張ったんだけど、友達できなくって……今ボッチが辛いんだ」

覚君が言った。


覚君と俺は別の中学校だった。

学校での友達にはなれない。


「あんなのムリだよ。友達100人なんか……いる奴いないもの。少なくとも俺は見たことがない」

俺が言った。


「そう……」

覚君が言った。


「変な言い方かもしれないけど、ボッチはクラスに1人はいる。他のクラスのボッチと連合組めば、10クラスあれば10人は友達になれるんじゃない」

俺が言った。


「そんな事できるかな?」

覚君が言った。


「なんでもやってみる事だよ」

俺が言った。


「そっか」

覚君が言った。


「それにSNSとかで合いそうなのを片っ端からフォローしていけば、たまにフォロー返してくれる人もいるから、それで100人って言えばいい」

俺が言った。


「そんなのありなの?」

覚君が言った。


「もちろんだよ。友達になるのに、国家資格もいらなければ、相手の同意すら必要ない。俺は覚君と知り合ってすぐに友達だって思ったけど、覚君の同意とか取らなかったでしょ」

俺が言った。


「そうだね。取らなかった。はじめ君は、僕のことを友達だと思ってくれてるの?」

覚君が言った。


「もちろんだよ。あっ、嫌だと言われても、君は俺の友達だから」

俺が言った。


「嫌じゃないよ。うれしいよ」

覚君が言った。


「そっか。じゃあ、俺みたいにすればスグに友達100人できるぜ」

俺が言った。


「そうかもだね」

覚君が言った。


「それに友達100人なんて、別に作んなくてもいいんだ。実際ゼロだっていいかもしれない。友達ってのは、似たもの同士がなることが多いから」

俺が言った。


「似たもの同士がなることが多いと、なぜ作んなくていいの?」

覚君が言った。


「友達が少ないってのは、似たものが少ないってことだろ。ゲームの世界でスライムって何百万といるじゃんか。でも魔王も勇者も通常は一人しかいない」

俺が言った。


「そうだね」

覚君が言った。


「じゃあ、似たものが少ないっていうのは、それだけで希少価値があるってことじゃないか」

俺が言った。


「そうだね」

覚君が言った。


「それはきっと価値のあることなんだよ。その価値がスグに見えてくる人と、そうでない人がいると思うけど、自分の好きを追求し続ければ、きっとスゲー光るようになると思うよ」

俺が言った。


「ありがとう」

覚君が言った。


覚君とは連絡を取り続け、8月28日になっても連絡は取れた。

家出もしていない。


そして気が付くと、8月31日になっていた。

これでフラグは折れたはず。

そう思った。


(ぷるぷるぷる……)

家の電話が鳴る。


「はい。はい。はい。えっ、本当ですか? で……はい。はい。はい。失礼します」

と母さんは誰かと話している。


もう聞きたくない。

俺は部屋に籠る。


ドアをノックする音がする。

「……従姉妹のお姉さんが亡くなったって」

と母さんは言った。


「なんで」

と俺は言った。


「川で溺れて亡くなったそうよ。お酒をかなり飲んでいたらしく……」

と母さんは言った。


覚君の次は、従姉妹のお姉さん……。

でもお姉さんがお酒をかなり飲むって、何があったんだ。


いつまで続くんだ、このループは……。


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