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マギア派とイデア派 ― 大陸史観



マギア派とイデア派 ― 大陸史観



■ 1. 起源 ― 分かたれた思想


この世界において、文明の始まりは両大陸で同じ神話を共有していたとされる。

それは「創造の双神」――


・マグヌス(理を司る神)

・イデア(生命を司る女神)


古代の人々は、マグヌスの教えから「理性・計算・構築」を学び、イデアの加護から「自然・調和・循環」を理解した。

当初、この二つは対立せず、一つの宗教体系として並び立っていたと記録にある。


しかし時代が進むにつれ、両大陸は地理的・文化的に分断され、それぞれの神を中心にした独自の文明を築いていった。




■ 2. アルトラシアの歴史 ― マギア派の成立


アルトラシア大陸は広大な平原と鉱脈に恵まれ、金属と石炭を豊富に産出した。

ここで発達したのは 機械文明 である。人々は蒸気機関、歯車、魔力を動力に変換する「魔導機構」を発明し、都市を築き上げていった。


やがて、この発展を正当化する思想が生まれる。

それが マギア派――「世界の真理は理性によって解析され、機械によって克服できる」という信念である。


マギア派の歩み

・約1000年前:アルトラシアの都市国家群が勃興。機械信仰を掲げる学派が成立し、宗教的権威を獲得。

・約700年前:王国連合の形成。戦乱の中で兵器開発が進み、魔導兵器と自動人形の原型が誕生。

・約400年前:大陸を統一した「アルトラシア帝国」が成立。産業革命に似た急激な技術革新が起こり、機械信仰が国是となる。

・約100年前:帝国の影響力が頂点に達し、周辺諸国を従属化。大陸を超えて他文明へと進出を始める。


マギア派は「機械は神の意志の具現」と捉え、人間は自然を制御する存在であると信じるに至った。

その結果、自然を支配し、都市と工場を築くことが「文明の義務」とされた。




■ 3. ヴァルディアの歴史 ― イデア派の伝統


ヴァルディア大陸は広大な森林と大河、そして魔力に満ちた土地であった。

人々は森と共に暮らし、狩猟や牧畜、薬草の利用を基盤とした共同体を築いた。


彼らが信じたのは イデア派――「人は自然の一部に過ぎず、その調和を壊してはならない」という思想である。


イデア派の歩み

・約1200年前:部族社会が成立し、精霊信仰を中心とした宗教儀式が行われる。

・約800年前:部族間を統合する「森羅連邦」が誕生。巫女やシャーマンが政治と宗教の指導者となり、自然との調和を掲げる。

・約500年前:アルトラシアから渡来した機械文明が伝来。しかし、ヴァルディアはこれを「自然を冒涜するもの」として拒絶。むしろ「魔術・薬草学・精霊契約」の体系を発展させる。

・約200年前:各部族を統合する「ヴァルディア王国」が成立。国是として「自然との共生」を掲げ、イデア派が正統信仰となる。


イデア派にとって、森や川は「神そのもの」であり、人が支配するものではない。自然を破壊する行為は禁忌であり、共同体は均衡を重んじた。




■ 4. 大陸間の接触と対立


両大陸が本格的に接触したのは、約300年前。

アルトラシア帝国の商人や冒険者が海を渡り、ヴァルディアの地を訪れた。


最初は交易が中心だった。アルトラシアは金属製品や機械を輸出し、ヴァルディアは薬草や魔石、精霊契約による祝福品を提供した。

しかしやがて、互いの思想の違いが鮮明になる。

・アルトラシア側:「自然を制御しない者は野蛮」

・ヴァルディア側:「機械に頼る者は神を冒涜する」


価値観の衝突はやがて政治的・軍事的な緊張に繋がった。




■ 5. 大陸間戦争の時代


約100年前、ついに両大陸は衝突した。歴史において「大陸間戦争」と呼ばれる時代である。


戦争の経過

・開戦期:アルトラシア帝国が交易港を掌握し、ヴァルディアの部族連合に侵攻。

・中期:ヴァルディアは精霊契約による「自然の軍勢」で反撃。森そのものを戦場化し、アルトラシア軍を退ける。

・後期:双方は膠着状態に陥る。海上封鎖、資源の奪い合い、難民流出が激化。

・停戦:およそ30年に及ぶ戦争の後、国境線を曖昧にしたまま停戦協定が結ばれる。


この戦争で両大陸は疲弊し、膨大な死者と難民を生んだ。

しかし停戦はあくまで「休戦」にすぎず、現在も冷戦状態が続いている。




■ 6. 現代の対立


現代の世界は、戦後数十年を経てもなお緊張が続いている。


・アルトラシア大陸(マギア派)

 → 工業都市と巨大帝国の支配が強固。だが内部では貧富の格差が拡大し、都市難民や無職労働者が増加している。

・ヴァルディア大陸(イデア派)

 → 自然と共生を掲げるが、人口増加に対応できず、食料や土地の不足に直面。部族間の不満や小競り合いが絶えない。


そしてその狭間で苦しむのは、辺境に暮らす人々――戦災孤児、奴隷、流民である。

医療は両大陸ともに「体制の中枢に属する者」しか受けられず、弱者は切り捨てられる。


ここにこそ、アレンとリアナが活躍する余地があった。

彼らの闇医者稼業は、この世界の歴史的矛盾の上に成り立っているのだ。




■ まとめ


・両大陸はもともと共通の神話を持っていたが、地理と文化により思想が分岐。

・アルトラシアは機械信仰「マギア派」、ヴァルディアは自然信仰「イデア派」を正統とした。

・交易を経て対立が表面化し、約100年前の大陸間戦争で衝突。

・戦後も冷戦と格差・難民問題が続き、世界は不安定な均衡にある。


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