第六章 白猫は
…………白猫が小さな家の前にいる。あの青年の家だ。辺りは暗く夜空に星々が静かに瞬いている。白い手を扉にかけて開けようとするが、鍵がかかっているのか開けられない。白猫は諦めたようで、大きな伸びをした後丸くなった……その時、ガッチャーン、ガタゴトと大きな音がした。しばらくして、眠そうな顔をした青年が鍵を外し扉を開けた。そこには、白猫の姿はなかった。そしてそれ以来青年の前に白猫が現れることはなかった…………
私は、夢をみていた……いや違う、あれは……あの白猫は私だったんだ。私は、あの白猫の何回目かの生まれ変わりなんだ。
翌朝、パジャマ姿の千紗が慌てたように、玄関で寝ている私の所に駆け寄った。
『おはよう、子猫ちやん。よく寝れた?』
千紗が心の声で話しかける。私は、大きなあくびと伸びをしてから、座った。しばらくすると、千紗の両親もやってきて三人で私をじーっと見つめている。私も負けじと三人を見つめ返した。負けるものかー!……パパは私を見つめたままで言った。
「ちゃんとお世話できるかい?」
「うん、ちゃんとする!!」
嬉しそうに千紗がパパに向かって答えている。
「私は何もしないからね」
ママは不機嫌そうに私を見ながら言った。
「いいの?本当に?やったー!!」
ママの一言で千紗の嬉しさが爆発したようだ。私を両手ですくって鼻と鼻をくっつけた。
「子猫ちゃんの名前は何にする?」
「何がいいかな……ミーミーって鳴くから、ミイはどうかな?」
千紗とパパは嬉しそうに話していた。
私は、名前をもらった……今日から私の名前はミイです。毛色は、茶トラ白の女の子です。皆さん、どうぞよろしく。