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ある日の猫  作者: 星乃夢
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第五章 薄い縁


 千紗と両親は二階の寝室に上がっていった後、私は暗くなった玄関で不安と寒さに震えながら丸くなっていた。段ボールの底は固く冷たい……。ウトウトしても、身体が痛くなるのでぐっすり眠れなかった。耳を澄ますといろんな音が聞こえてくる。家の外では、街灯の灯りに群がっている虫の羽音や側溝を走り回る小動物の足音……ネズミかな?

 今度は家の中、タン、タン……タン、ゆっくり階段を降りてくる足音が聞こえてきた。何となく足音の主は千紗ではないと思った。ということは……千紗のママかパパ?

 千紗のママは、千紗の声とよく似ている。千紗はいつも迷いがあって自信がなさそうだけど、ママは真逆だな。声の響きもストレートに聞こえる。それにしても、さっきはびっくりしたな……思い出すだけで、またしっぽがフワフワしてきそうになる……。

 千紗のパパは、千紗の雰囲気とよく似ている。決して無理強いしない事や私みたいな猫に対しても気持ちを尊重してくれる……と言っても、さっき会っただけなので確かではないな。

 私のいる玄関からは見えない部屋の明かりを誰かがパチっとつけて……光の束のいくつかが私のところにも届いた。耳を澄ますと、ガサゴソと何かを出し入れしているような音がする。

『こんな夜中に誰だろう?何をしているのだろう』と思いながら、私の耳はいろんな音を捉えようとしている。

『!!』

 一瞬電流が全身を駆け巡ったように一つの話を思い出して、私は飛び起きた。私の心臓が高鳴り呼吸も浅くなってきた。

『もしかして、千紗が言っていた……翌朝には居なくなっていた!?』まさか私も……朝が来る前に、千紗と会えない所に!?

 ドキドキして身体の動きが止まってしまった私の所に、こちらに向かって歩いてくる足音が近づいてきた。そして……私の上に何かが降ってきた……。

「寒くないかい?」

 千紗のパパが温かい大きな手で私を抱き上げ、もう一つの手で箱の中にタオルを敷いてくれている。パパの手は温かくて安心感があった……そしてなぜだが懐かしく感じた。

 パパは静かな声で何かを話しかけてくれたが……千紗のような心の声でないので、私には理解できなかった。恐怖や不安の気持ちがサァーっと消え去り、いつしか私は眠りに落ちていた……。

 

 ……私は夢を見ていたのだろうか?もしかしたら、今日の出来事は全てが悪夢、夢の中の出来事で……目が覚めたらお母さんや姉弟と一緒にいるのかもしれない……

 

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