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パイオツを求めて!!

「なんだお前達、やれば出来るじゃないか!」

「ラッキー。まあ出来過ぎかもね」

「HPの戦略がなかったなら、こんな上手くいかなかったでしょう」

「悲観的だな。勝ってるんだから喜べよ!」

「でも先生、まだ西野さん出ていないですから」

「言ってるそばから、出るみたいだぞめぐみが」


「やっばー。どうする? 誰がディフェンスするじゃん?」

「今の2ピリオドで、誰が一番点数取ってる?」

「斎藤プロじゃん。次いでダンカンが点数取ってるじゃん」

「今日の俺はラッキーだからな。点取るぜ」

「ダンカンと篠山先生がめぐみちゃんをディフェンスするのは、ミスマッチが起きちゃうから駄目だね。俺かHP、斎藤プロの誰かがディフェンスするべきなんだけど……斎藤プロがディフェンスするのは、攻守での負担が大き過ぎる。だから俺が付く」

「なんで手塚部長? 俺がディフェンスするのが一番じゃん? 点数には一番貢献していないじゃん」

「HPの頭脳も最後まで必要だから俺がやるよ。皆にカバー頼む事になるとは思うけど頑張るよ」

「分かった……じゃん」


「話しはまとまったか? 行って来い」

「「「「「はい」」」」」

 再び円陣を組む。


「後半からが本当の勝負になりそうだな。せっかくリードしてるんだ。勝とうぜ! 赤西ーーー!!」

「「「「「OPI!!」」」」」


 女子チームボールから始まった。郡司がエンドラインでボールを持っている。

「へいユミ! ボール出せ!」

 ボールを受けたのはめぐみだった。


 真面目にめぐみと相対した事は、一度たりともなかった。そしてボールを持っためぐみと一対一になって初めて分かった。

 普段学校で見せているものとは全く違い、顔つきや雰囲気には凄みがり,恐かった。全国に出た黒田中やストリートでやりあう大人達よりも威圧感があり、押しつぶされそうになった。

 フェイクを一度入れためぐみが俺の左側を抜きに来ようとしたので、俺はステップを踏んで前に入り、進行方向を防いだ。

 よし。そう思った瞬間には、俺の右わき腹辺りをするりと抜けて行った。


 うそだろ! 切り返しが速すぎる!

 振り返ってすぐに追いかけようとした時には、すでにシュートモーションに入っていて、3ポイントラインより大分遠い位置からシュート放っていた。


 ――バスッ。

「ディフェンス!」

めぐみが軽やかに戻っていく。


「ヘイ。ダンカン」

 ドリブルをして敵陣へと向かう。めぐみがディフェンスしているのは、斎藤プロだった。俺は斎藤プロが、めぐみ相手でも攻める事が出来るのかどうか確認したくてパスを出した。


 3ポイントライン辺りでボールを持った斎藤プロは、フェイクをかけてドリブルを仕掛けようとする。それもフェイクで、少し後ろに身体を反らせながらシュートモーションに入ろうした時、斎藤プロはボールをカットされた。


 ルーズボールを拾っためぐみは、そのままドリブルしていく。俺は、レイアップシュートしてくる事を警戒して、めぐみよりも速くゴール下まで戻った。

 めぐみはそんな俺の裏をついて、3ポイントシュートを放ち、入れた。

 たった数十秒で6点決められ、同点。


「HP!!」

 俺はHPに向かってTの文字をジェスチャーした。


 ――ビィーー。

「タイムアウト青」


「わりぃ。止められる気がしないわ……でもやるしかない。オフェンスに参加するのを控えて、ディフェンスに全力使ってもいいか?」

「めぐみちゃん、マジで容赦ないじゃん。カバーするにもカバーしたらフリーを作っちゃうだけじゃん……」

「手塚部長がディフェンスに専念するなら、俺とHPで運ぶしかないね」

「私とダンカンも使ってパスで繋ぎましょう」

「僕も、それがいいと思う」

「お前達、ラン&ガンでも攻める事が出来るのか? 試合見ている限り、手塚起点でいつも始まっていただろ? 出来ない攻撃パターンをいきなりやろうとすると、ミスが増えるだけだぞ。その辺考えているのか?」


「西野先生の言う通りっすけど、めぐみちゃんを足止め出来なければ、俺達に勝ち目ないっすからね。昔のルールならゾーンディフェンスやらボックスワンとかで対応出来たと思いますけど、今では出来ないですからね……手塚部長のディフェンス力に託すしかないっす」

「納得しているならそれでいい」

 ――ビィーー。


「よし、行こう」

「888《ハチハチハチ》」

 ボールを運んできたHPが作戦を叫ぶ。888は、字の如く数字の8の様に動き、回数は、何人がその動きをするのかを表していた。

 壁役のスクリーンである俺は、フリースローライン辺りでスクリーンを構える。斎藤プロとダンカン、篠山先生が一斉に動く。

 隙を突いてパスを出し、展開していくはずだが、女子チームのディフェンスは完璧で、隙を作る事もマークを外す事も出来なかった。


「ゼロ!!」

 再び叫ぶHP。俺と斎藤プロの二人でHPにスクリーンをかける。ドリブルをしてスクリーンを使うがマークは外れない。打てるような状態ではないが、HPはシュートを放った。

 勿論そんな適当なシュートで入る訳がなかった。

 24秒計を見ると、すでに10秒経過していた。


 リングに当たって大きく跳ねたボールを、空中で篠山先生が競り取る。俺はその動きを見た瞬間にゴールに向かって走った。

「へい!」

 篠山先生に声をかけながら。自分のマークをチラッと確認すると、郡司がすでに迫っていた。

 バウンドパスで俺にパスを通し、俺は受け取ると、あえて少しスピードを落として、郡司が追いつくように緩めた。

 ゴールに向かってレイアップシュートをしようとした瞬間、横にいる郡司がシュートを邪魔しようとしていた。

 俺は身体を寄せ、あえてぶつかりにいきながらシュートをしにいった。


 ――ピィ!

 笛が鳴った。少し体勢を崩しながらも俺はシュートを決めた。

「ファアル、白4番」

 ファアルのコールをされると、郡司は嘘でしょ? と言わんばかりの納得していない表情を浮かべながら手を上げ、俺の事を睨んでいた。


 最後の最後まで諦めない真面目な郡司だからこそ、ファアルをもらいにいけたプレーだった。

「そんな卑怯なプレーして!」

「どうぞ、なんとでも……」

 

フリースローラインに立つ。ボールを受け取った俺は、手元でボールを回して深呼吸を2回行い、シュートを打って入れた。


 入って良かったと思うのもつかの間、めぐみがすぐにボールを貰って速攻で攻撃してきた。どうにか追いつく事が出来た俺は、簡単には点数を入れさせないように、レイアップシュートの体勢に入っためぐみの邪魔をしてボールに触れようと思った。

 が、めぐみも同じような事を考えているのではないかと瞬時に思った俺は、そのままシュートに行くのを許した。


 シュート入れためぐみが、俺に視線を送る。もしシュートを止めようとしていたら、ファアルを誘われたかもしれないと思った。


 めぐみが入った事で女子チームの士気が上がり、動きが格段に良くなった。俺をマークしている郡司も自分の負担が減ったからか、役目に集中し始め、明らかにディフェンスの当たりが厳しくなった。

 全国大会に出場している強豪校本来の姿を、見せ始めていた。


 少しずつ差が突き始めた。本気になって練習し始めた間もない俺達と、一年の時から本気で全国を目指してきた郡司達の差だと思った。

それでも、負ける訳にはいかない。俺達にはOPIがあるのだから……。


 ――ビィーー。試合が終了した。

「はぁ。はぁ。はぁ」

 結局俺は、最後までめぐみを止める事が出来なかった。


「74-62で女子チーム。礼」

「「「ありがとうございました」」」


 結局負けた。

俺達はベンチに戻ると、パイプ椅子にもたれて天井を見上げ、タオルを顔にかけた。後半は、全くチームに貢献出来なかった。

 他の皆も椅子に座ったまま、動かなかった。


「なんだ? さっさと部室戻ってサボったりしないのか? 私と初めて会った時は、負けてもヘラヘラして遊んでいただろ?」

 俺は、タオルを使って汗を拭った。


「「「「「……」」」」」

 今日の試合で、明らかに俺達のレベルが上がっている事は実感出来た。だからこそ、負けた事が悔しかった。別に女子チームを舐めている訳じゃない。

たったちょっとの間だけ本気になったからって、簡単に勝てるとは思っていない。思ってないが、やはり負けた事が悔しかった。


「先生……俺達は、これからどうしていけばいいですか? このままでいいんですか?」

 俺の本心から出た言葉だった。


「このままじゃあ、ちょっと厳しいかもな」

「西野先生、俺達にまだ足りない事って何ですか? 教えて下さい」

「塚本が、練習や戦術を考えたんだよな?」

「そうっ……すよ。一応俺が考えました……」

「大したもんだよ。中学生が考えた練習や戦術じゃない。今やっている事も目指しているチーム戦術も間違ってない。ただ、一年の時からやっていたらな。と思うよ」

 

それは、元も子もない発言だった。


「これ以上俺達は、急激な成長を望めないって事ですか?」

「そうだな……まだまだ改善の余地はあると思うよ」

「それは西野先生から見ても、俺達が全中に行ける可能性が見えるって事ですよね?」

「可能性って意味なら、全ての中学校に可能性があるだろうよ」


 別に何だっていい。俺達にまだまだ成長の余地があるのなら、何だってしたい。俺は立ち上がって頭を下げた。

「その改善の余地を教えて下さい! お願いします西野先生!」


 ガタガタっとパイプ椅子が動く音が聞こえた。

「「「「お願いします!!」」」」

 皆も頭を下げていた。


「なんだ? なんだ? そんなに私とめぐみのおっぱいが見たいのか?」

「「「「「……」」」」」

 そのまま頭を下げ続けた。


「チッ。頭を上げろよ。教師が生徒に頭を下げさせるなんてだせぇだろ! 分かったって。私は男子バスケ部の顧問だからな。たまには顧問らしい事をしないとな」

 

その言葉を聞いて頭を上げた。

西野先生は、バツが悪そうに頭を掻きながらため息をついた。


「「「「「あざーっす!!」」」」」

「それじゃあ準備しないとな。行くぞ!!」


「行くぞって……一体どこっすか?」

「合宿だよ」



「「「「「えっ?」」」」」





「面白かった!」

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