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俺達の待遇とパイオツ

 俺達男子バスケ部は、体育館をほとんど使わせてもらえない。外での練習だけではやはり限界があった。そう、雨が降ったら流石に何も出来ない。

 なので女子バスケ部の橘先生と交渉し、練習と練習の合間にある休憩時間だけは、コートを使っても良いという承諾を得た。その時間になるまで俺達は、舞台の上でハンドリング練習や試合で使うファーメーションの確認などをしていた。


「休憩!」

「「「はいっ」」」

 休憩になった瞬間走り出し、シュート練習を始める。その時間はたった5分しかない。


「早く! 早く!」

 シュートを打つ人以外はリバウンドに回り、拾ったらガンガンパスを出して、シュート10本交代でどんどん回していく。

 丁寧に打つ事も大事だが、俺達が目指す7秒オフェンスでは、早さも求められるからこそ、これはこれで練習になるのだ。


「ヘイヘイ!」

「ダンカン! 次! 次!」

 ――。


「手塚! 休憩が終わるから、もうどいて!」

「分かったよ郡司……」

 女子バスケのキャプテン郡司弓子ぐんじゆみこ。俺達に対して一年の時から当たりが強い。はっきりと『男子バスケ部が嫌い』だと宣言された事がある位だった。

 郡司は、責任感も強く真面目。練習熱心で実力もある。一年の時からずっと努力してきた彼女からしたら、俺達が遊んでいるのを見て嫌いになるのも無理はなかった。


「郡司さんって、ちょっと恐いよね……」

「でも後輩や同性からは人気ですし、普段は優しいですよいつも」

「ただ、俺らに厳しいってだけじゃないかな?」

「誰もが部長になるのはめぐみちゃんだと思っていたけど、めぐみちゃんが橘先生に直談判した事で郡ちゃんが部長になった噂じゃん?」

「えっ? そうなの? HPが何でそんな事知ってんだよ!」

「噂って、どっかから漏れるものじゃん」

「それにしても、女子の練習をちゃんと見たのは初めてですけど、厳し過ぎじゃないですか? 止まって休まる気配がないです」

「それよりも凄いのは、めぐみちゃん。練習始まってからシュートを1本も落としてない」

「マジ!?」

「ずっと見てたから、間違いない!」

「「「「おおおおおお」」」」

「練習するなら真面目にやんなさいよ! うるさいのよ!」

「「「「「すいませ~ん」」」」」


 舞台の上で、ドリブルの練習をしながら喋っていると、また郡司に怒られた。凄い顔で睨まれながら……。

 俺達は、ただ雑談をしている訳ではなかった。雑談しながらでもボールを簡単に扱えるようにする為の練習だった。

 黒田中との練習試合、ストリートの試合でもそうだが、プレッシャーをかけられると、どうしても手元から一瞬ボールが離れてしまい、そのせいでプレーが遅れたり、止まったり、奪われたりしていた。


手元だけに集中してドリブルすれば、ある程度の実力があれば、試合中に奪われる事は少ない。だけど、試合で必要な能力はそうじゃない。

味方の動きと敵の動き、そして目の前でディフェンスしている相手を視野に入れ、頭では他の事を考えつつドリブルをしているのに、奪われない能力が必要なのだ。

遊んでいるように見えるが、決してそうではなく、意味があった。


「俺達って馬鹿じゃん。近くにこんな参考になるバスケがあったのに、今まで全く注目してなかったなんて。奪える技術は、全部奪っちまおうじゃん」

「こうやって冷静に見ると、やっぱりって言ったら変だけど、全員上手いよな。めぐみちゃん以外もちゃんと上手い」

「だからこそめぐみさんも、いい意味で自由に出来るんじゃないですかね?」

「ワンマンチームだったら全国に出られてないと思う……NBAでもそう。いくら強い人がいても、ワンマンチームでは結局負けるんだよ。バスケの神様、マイケル・ジョーダンでさえも、一人では不可能だったからね……」

「結局は仲間、チームワークが大事って事か? 俺達にチームワークなんてあんのか?」

「チームワークは分からないが、ハッキリとまとまっている事が一つだけあるだろ?」

 皆の視線が俺に集まった。


「OPIだよOPI。その為に頑張ってるだろ」

「なるほどじゃん」

「確かに」

「そ、そうだね」

「納得です」


「手塚! これから30分間、自由なシュート練習になるから、打ちたかったら打ってもいいぞ」

「橘先生、いいんすか?」

「ああ、構わないぞ」

「「「「「あざーす!」」」」」

 貴重な練習時間を無駄にしないように、シュートを打ちまくった。


 雨が降るのは仕方ないが、体育館が使えない俺達にとっては死活問題だった。少しでも晴れたり、曇りであれば、ぬかるんでいても外を走った。野外の部活動が室内練習でも、俺達は、靴や靴下、服が汚れようとも外で走り込んだ。

時間があれば5人でストリートバスケに向かい、賭けバスケをして腕を磨いた。大人達も悪い人だらけって訳じゃない。俺達にバスケを教えてくれた。


練習や新しい事を試すのは学校で、実戦的な事をするのはストリートで。そうやって繰り返す日々を過ごした。

時々、この練習で、そして方向性として本当に大丈夫なのか。と思う事もあったが、これ以上何をしたらいいのか正直分からなかった。



「良かったなお前達。明日、女子バスケ部と再戦が決まったぞ」

「えっ? こんな時期にですか? 西野先生」

「ああ。めぐみから提案があった。顧問の橘先生も承諾している」

「め、西野さんからっすか?」

「なんでも、最近部活の雰囲気が生ぬるいから、引き締める為に試合がしたいと」

生ぬるいだって? 冗談だろ?

「生ぬるい? めぐみちゃんきびすぃー」

 そう言葉が漏れたHP。


「でも引き締めるって……俺達じゃあ力不足では?」

「それは知らん。めぐみが直々に、男子バスケと試合させて欲しいって言ってきたんだ」

 俺達は顔を見合わせて、首をかしげた。


「分かりました……準備しておきます」

「気合い入り過ぎて、怪我しないように気をつけろよ」

「そうっすね。怪我させないように気をつけます」

「違う。違う。お前等の話だ。気をつけろ」

「え? あっはい」

「今日の練習は、ほどほどにしておけよ」

「分かりました」

「「「「「ありやしたー」」」」」


「部室行って作戦会議でもするか。せっかくだから色々試させてもらおう」

「せめてちゃんとした試合にはしたいですね。前回私達は、何点取りました?」

「僕達の点数は、2ピリで5点だったよ確か……」

「それは……酷いですね。出来る事なら点差は30点以内にしたいですね」

「その為の作戦会議じゃん!」

 部室でHPが作戦ボードを使って作戦を伝え、相手がしてくるであろう攻撃パターンと対策まで考えてくれていた。

 しかし、最終的にはどうやってめぐみを止めるか? という話しになったが、誰がディフェンスしても無理だろうとなり、とにかく近くに居る奴がカバーして、どうにかして被害を最低限にするしかないという結論に達した。


 そして俺達は、しっかり準備をした上で、女子チームとの試合に挑む事になった。





「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


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