成長と壁
俺達のレベルが元々低いからか、成長している事をすぐに実感する事が出来た。
外周のタイム。シュートの成功率。数字がみるみる上がっていく。シュートに関しては、先生の助言も大きかった。今までのフォームではなく、一から見直す事で明らかに入るようになった。
最初は抵抗があったツーハンドでのシュートも、入ればどっちでもいいだろという精神になり、今では抵抗感がなくなっていた。
今日も練習に励んでいる時だった。
「集合しろお前等。練習試合組んで来たぞ」
「練習試合ですか? どことです?」
「黒田中」
「黒田中だって!?」
HPが大声を出した。
「俺も……練習試合をしたいとは思ってましたけど、いきなり黒田中……すか?」
「どこかで当たる可能性があるだろ? それに実力を試すにはもってこいだろ塚本」
二人のやりとりに、俺と他のメンバーはピンと来ていなかった。
「HP……どういう事!?」
「黒田中は、去年の群馬県大会優勝チームじゃん。今年も強くて優勝候補の中学だよ手塚部長」
「げっ!? マジ!?」
「マジマジ」
「私達、いきなりそんなチームとやって、大丈夫ですか?」
「なんだ、なんだ? お前等ビビってんのか? まあもう決まった事だからよろしく。今週の土曜日にやるから準備しておけよ~」
西野先生はそう言って、怠そうにしながら去って行った。
「あの先生、どうやって黒田中なんかと練習試合組んで来たんだよ……普通無理じゃん? 地区予選一回戦敗退のチームじゃん俺達」
「もしかして、西野先生って結構凄い人なんですかね?」
「お! ハートのエースが出たよラッキー」
「と、とにかく頑張るしかないよね。緊張するなぁ〜」
「練習を続けようか」
俺達は練習を再開した。
土曜日の練習試合の日を迎え、黒田中を訪れた。
「おっ、おっ、おっ、おっー、おっ、おっ、くろだ!」
「おせ、おせ、くろだ。いけ、いけ、くろだ!」
――バンッ。バンッ。バンッ。
「いちいち応援、うるさいな!」
「気にするな斎藤プロ」
とは言ったものの正直気になるし、相手の雰囲気に飲み込まれる。黒田中の部員は、50人以上はいるだろうか。
「エッーサ。エッサ。エッサ。エッサエッサ。エッサエッサ。エッサエッサ」
大声を出しながら、レギュラー陣は淡々とアップをしている。一秒も無駄にしない、流れるようなアップに見惚れてしまう。皆も黒田中のアップを見ていた。
「集合!!」
応援の中でもはっきり聞こえた西野先生の声。俺達は、先生のもとへ集まる。
「どうだ!? 群馬県一位のチームは」
「別に……大した事ないんじゃないのー?」
「へぇー。そういう割にはシュートをボロボロ落としてたな斎藤。他の奴らも動きが硬い。映像や数字の中だけでは、分からない事があるだろ塚本」
「えっ? あ、そうっすね……はい」
「あれが見えるか?」
西野先生が親指で差した方を見ると、黒田中バスケ部の親だと思われる人達が大勢座ってビデオなどを回していた。
「生徒の親だろうきっと。土曜日なのに、なんとも熱心な親達だと思わないか? お前等は県大会で勝ち進んだら、いつかはこんなシード校と当たる事になる。黒田中と同等の中学と当たるって事だ。分かるか?」
西野先生が、真剣な顔で話しだす。
「お前等にとっては、慣れていない大きな会場で、無駄に声のデケェ圧力のある応援の中、戦わないといけない。それだけでも不利なのに、きっとダブルヘッダーの二試合目にシード校と戦う事になる。強豪校に勝つってのは、本当に難しいんだよ。私の言ってる意味、なんとなく分かるだろ?」
「「「「「はい」」」」」
「良かったな今日が本番じゃなくて。この環境に今日慣れろ! こんな状況でも実力が出せるように慣れろ! いいな!?」
「「「「「はい」」」」」
「よし! 好きに暴れてこい!」
俺達は円陣を組んだ。
「手塚部長、西野先生って私達の事を応援していなんじゃないですか?」
「そうだと思うよ」
「スペードのキングが出たラッキー。手塚部長、俺にパスくれ。今日はいける気がする」
「分かった。分かった」
「どうしよう……僕おしっこ行きたくなってきた……」
「試合始まったら収まるから我慢しろよダンカン」
「じゃあやろうじゃん。久しぶりの試合じゃん」
「「「「「OPI! OPI! おれたちーのOPI!」」」」」
「「「「「OPI! OPI! 夢と希望のOPI!」」」」」
――ビィーー。
「整列。これより赤西中と黒田中の試合を始めます。お互いに礼」
相手を目の前にして分かる、圧倒的強者感の雰囲気。同い年なはずなのに……。
「「「おねがいしまーす」」」
中央の円の中にダンカンが入り、俺達は円の周りで構えた。
――ティップオフ。
相手がダンカンよりも高い位置でボールを弾いて味方に落とした。
流石に勝てないか……。
4番が受け取ってドリブルを突いた瞬間、斎藤プロが、後ろからそのボールを弾く。俺の手元にボールがやってきた。
「ヘイ!」
すでにゴールに向かって走り出した斎藤プロに、パスを出す。
相手は斎藤プロの速攻を止める為に、5人がすぐに自陣へと戻っていた。
――戻りが速過ぎるだろ。
3ポイントラインよりも遠い位置で足を止めると、斎藤プロはシュートを放った。
――パスッ。
独特な放物線を描いて、斎藤プロはシュートを決めた。
「ラッキー」
前年度の優勝チームから先制点を取り、3点リードした。
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