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おっぱいの現実は苦しい!!

 それからは毎日走り込んだ。毎日。毎日。毎日。

 全身が筋肉痛でバキバキになりながらも走っていた。交代要員も居ないのだから、一人がバテてしまったらその時点でチームとして弱点になってしまう。まず体力がないと戦う土俵にすら立てない。一番の課題だった。


 そんな俺達は、今日も学校の周り800メートルある外周を、一人ずつ決められた秒数以内に入る事がノルマとして課され、ストップウォッチを持って走っていた。

 「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ」

 ストップウォッチの記録を見て、タイムがオーバーしている事を確認した俺は、ゆっくりと歩きながら呼吸を整えていく。


「レロレロレロレロー」

「レロレロレロレロー」

 他の4人が、木の幹に手を置いて吐いていた。俺は焦って近寄って行く。


「おい! 大丈夫かよ……おいって!」

 どうやら返事も出来ない様子で、手だけ上げて反応していた。俺はダンカンの背中をさすった。

「ダンカン平気か?」

「レロレロレロレロー」

 涙を流し、鼻水も垂らして口から吐いていた。


「手塚、部長。こんな事までしないと僕達は、見る事が出来ないの? 今日、同じクラスのサッカー部の三橋が、あの子とやったんだぜ。とか、年上の高校生とやっちゃったとか自慢していたんだよ……。別にムカつくとかじゃないんだ。だけど、だけど僕らって、見るだけでこんな苦労しなきゃいけないの? レロレロレロレロー」

 ダンカンが、呼吸を乱しながら吐き出した言葉だった。


 言いたい事は分かる。こんなしんどい思いをしてまでする必要があるのか? と。


「今までに、水に対して心から感謝した事があるか? 俺はない!」

 俺の言葉に、皆が少し顔を上げた。


「喉が渇いている時に飲んだら美味しいとは感じるけど、心から感謝なんかしないだろ? だけど、砂漠で遭難して、死にそうになった時に飲む水って、クソ美味くて、本当に心から水ありがとう! 生きてる! って実感出来そうじゃないか? 三橋が感じてるのは潤った状態で飲んでる水みたいなもんなんだよ。だけど俺達は違う。カラッカラになった状態で、最高の水を飲もうとしているんだよ……一生の感動になりそうだと思わないか?」


 自分で何を言っているのか、自分でも分からなかったが、何故かそんな言葉が出て来た。


「皆、落ち着いたら今日は帰っていいよ。俺はもうちょっと走っていく」

 そんな事を言ったはいいが、自分の発言が急に恥ずかしくなってしまった。その場に居たたまれなくなった俺は、走り出し、荷物を持つとそのまま帰った。


 家に到着してからも後悔していた。疲れて頭が働いていなかったからなのか、本心なのかは定かではないが、俺にとっての一つの黒歴史になったのは間違いない。それを聞いていたのがバスケ部の奴等だけで助かった。


 身体が疲れているのにかかわらず、寝る事が出来なかった。これも不思議な感覚でしかなかった。あまりにも疲れ過ぎていると眠る事が出来ないのだとこの時知った。

 眠る事が出来ないまま時間だけが過ぎていき、時計を見ると午前3時を過ぎていた。


 俺は起き上がって着替えるとバスケットボールを持って外へと出る。誰も居ない静かで暗い中、街の外れにあるストリートのバスケゴールがある場所へと向かった。

 こんな時間では散歩している人すらいない中で、後ろの遠くから走る音が聞こえて来た。どんどんそれはこっちに向かってくるので、俺は振り向いた。


「おい。HPじゃないかよ! ビックリさせるなよ」

「手塚部長!」

「何してるんだよ……」

「それはこっちのセリフだって」

「まあ見ての通り走ってた。……手塚部長どこ行くの?」

「ストリートのゴールでシュート練習でもしようかと」

「じゃあ一緒に行こうじゃん」


「俺が作戦とかメニューとか考えたじゃん? なのに本人が一番出来ないって駄目だろ? それに、一番体力もセンスもないのは俺じゃん……本気で全国目指したら足手まといになるのは俺だろ?」

「そんな事ないだろ? まだ時間があるんだし焦るなって」

「いや、いいって。俺自身が一番分かってるじゃん。大事な試合や場面で、足手まといにはなりたくないじゃん」

 真剣な顔でHPは、そう話す。


「ハハハ。流石HP。そこまでして見たいんだな!」

「まあな」

 HPはニヤッと下卑た笑いを浮かべた。


 ダンッ。ダンッ。ダンッ。

 目的の場所に近付くにつれて、ドリブルをする音が聞こえた。

 先客か? こんな早い時間に?


 少し緊張しながらストリートコートに向かっていくと、そこでバスケをしていたのは見知った顔ぶれだった。

「おいおい。なんで皆こんな所にいるんだよ」

「あっれー。手塚部長とHP」

「おはよう」

「おはようございます」

 篠山先生とダンカン。そして斎藤プロが居た。


「部活終わって家に帰ってもやる事ないしさ、早く寝るんだけど、早く起きちゃうしさ。でもやることないから、ここに来て練習でもしようとかなと」

「なんか、考える事は皆同じなんだな。ハハハ」

「どうやらそうみたいですね」

「じゃあ皆でさぁ、練習しようよ」

「だな」

 そうして俺達はストリートのコートで、時間ギリギリまでみっちりとシュート練習をやった。


 ほとんど寝ずに学校へと行った俺は、勿論授業では眠くなり、爆睡した。

 放課後になってやっと目が覚めた俺は、外ではなく、体育館へと向かう。平日の一日だけは、女子バスケ部とコートを半分にして体育館を使える。それが今日だった。


 いつもなら適当に遊んで終わるが、真剣にシュート練習していく。シュートを放って成功率を記録していく。どの場所が得意でどこが苦手なのか。明確にしていく為だ。

 普通の練習ならば、苦手な場所を克服していくものが、そんな時間がない俺達は、得意な位置を見つけたら、その位置からのシュート成功率を徹底的に上げていくというやり方をしていく。


 そして今日、顧問になってから初めて西野先生が俺達の練習を見ていた。何か指示を出す訳でもなく、ただ俺達のやっているシュート練習を眺めていた。


「集合しろ!」

 突然の声に俺は驚いた。

「集合だって言ってるだろ」

 困惑しながら、西野先生のもとへと集合した。


「お前等のシュート見てたけど、とにかく全部が硬い。全員ゴール下でリバウンドしろ。私がシュートを打つから、拾ったらそのまま私にパスくれ。見本を見せてやるから、よく見ておけよ」

 西野先生がそう言うと、3ポイントラインの0度の位置に立った。ジェスチャーでボールを寄こせとやってきたのでパスをする。


 流れるような動きで、西野先生はワンハンドシュートで打った。

 綺麗な放物線を描いて、ゴールに吸い込まれていく。


「ヘイ!」

 先生は位置を変えてボールを要求する。それも見事に決めた。また位置を変える。反対の0度の位置まで同じようにシュートを放ち、全て沈めた。


「私は女だぞ? お前達よりも圧倒的に筋力はないよ。それでも身体を上手く使えば、楽に3ポイント打てるんだよ。でもお前等は、力んだり体勢が前かがみになったりして、上手く力をボールに伝えられてない。無駄な力が入り過ぎなんだよ」

 西野先生は、今度はツーハンドでシュート打ち、同じようにゴールを決めていく。


「どうしても力むならツーハンドで打て。流石にツーハンドなら力まずに打てるだろ?」

「先生、ツーハンドって……男で使う人いないですよね?」

「基本はな。そもそもツーハンドだって使っているのは、日本人だけだぞ? 世界選手権とか見たら、女性でも全員ワンハンドだぞ」


「男がツーハンド……馬鹿にされて、笑われませんか?」

「お前は馬鹿か手塚。たった数カ月で全中目指すんだろ? 勝つ為なら、なんでもいいだろ? プロを相手にするならツーハンドじゃあ通用しない。けど相手は中学生だ。ツーハンドでも問題ない。ツーハンドの方が、成功率高いならツーハンドを使え」


 ボールを持っていた俺は、3ポイントラインから3メートル程離れた所からツーハンドでシュートを放ったら、ゴールに入った。


「ナイスシュ! そういう事だよ手塚。他の奴等も使えると思ったら何でも使え。常識とかに捉われるなよ。普通にやったって時間ない事位、分かるだろ?」


「「「「「はい」」」」」

「でも斎藤だけは、ワンハンドシュートだけを使え。貴重なサウスポーだからな」

「分かりましたよ」


初めて助言らしい助言をしてくれた西野先生。俺達の実力でも、この人はバスケが上手いんだとすぐに分かるほど、シュートフェームが洗練されていた。



「よし! シュート練習を続けろ!!」

「「「はい」」」





「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

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