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目指せ! パイオツ!

 現在は夜の10時。いつもなら皆とオンラインでゲームをしている時間帯だけれども、ベッドに横になりながら冷静に考えていた。

 さっきは勢いで全中目指すと発言してしまったが、冷静に考えると無理だろ。と俺の中では結論が出ていた。

 県大会にも出ていない地区予選一回戦で負ける俺達が、全中に出るなんて、地球がひっくり返らないと不可能だと思った。


 皆も俺と同じような事を考えているのかもしれない。だから連絡がないんだと思う。明日になったら皆に聞いてみよう。調子に乗ったけど、西野先生に謝って前言を撤回しよう。


 次の日になり、学校に着いてチャイムが鳴る。同じクラスのHPが来ていない。

昨日の今日で休み? それとも興奮し過ぎて熱でも出したのかと思っていた。


放課後になって皆が集まるが、冷静になってしまったのかもしれない。昨日のテンションの高さはどこにもなかった。誰も口には出していないが、心の中で『全中目指すとか、面倒だし、やめない?』という声が聞こえてくる。


「手塚部長。今日の部活は、どうするの?」

「職員室行って、西野先生に聞いてみるよダンカン……顧問だし何かメニューとか考えてくれてるかもしんないし」

 俺は職員室へと向かう途中で、西野先生を見かけた。


「西野先生!」

「どうした手塚」

「今日部活なんですけど、何すればいいですか?」

「何すればいいって、お前達で考えたらどうだ?」

「えっ? 俺達で? 先生顧問っすよね? 何もしてくれないんすか?」

「なんで、生おっぱいを賭けた相手の手助けしないといけないんだよ」

「いや……」

 先生が言っている事は、ごもっともだった。


「分かりました……俺達で何とかします」

「下校時間だけは守れよ~」

 西野先生は、歩きながら手を振った。



「どうだった?」

「お前達で考えてやれって言われたよ」

「じゃあ今日の部活どうするの?」

「ならいつも通り、部室でポーカーしようよ」

「今日HPが休んでたんだけど、誰か何か知らない?」

「昨日あの後、僕の所に連絡が来て、バスケの映像あるだけ送ってって言われたけど」

「ダンカンに? HPの奴、何か考えでもあるのか?」

「さあどうだろうね」

「結局、どうするんですか?」

「とりあえず……いつものメニューをして早く帰ろうか」


 俺達は、1年の時からやっている外で走るメニューをやり始めた。1時間程走れば、全てのメニューが終わる。その後は、下校時間まで外にあるゴールを使って練習してもいいし、帰ってもいいのが通例だった。

 普段なら部室で遊んでから帰るのだが、今日は遊ばずに帰った。体育館の横を通ると、女子バスケが練習している大きな声と音が聞こえる。

俺達男子バスケ部は、ほとんど体育館を使わせてもらえなかった。

 全国に出るような強豪の女子バスケ部が、体育館の使用を優先されるのは当たり前だ。体育館であまり練習出来ない事は、最初から納得していた。

頑張れ女子バスケ部と思いながら、俺は家路に着いた。


次の日になってもHPが学校に現れなかった。5時間目が過ぎた頃、スマフォにメッセージが届いた。

『放課後、手塚部長と俺のクラス。2組に集合!』

 HPからのメッセージだった。


 放課後になり、教室にいる生徒達が次々に部活に向かっていく。隣のクラスから篠山先生、ダンカン、斎藤プロがクラスに来て、適当に席に座った。

「斎藤プロいいんですか? 手塚部長の隣の席、めぐみさんの席ですよ? 私達しかいないんですから、座ったらどうです?」

「いいよ! 茶化すなって!」

「やー! やー! やー! 皆お待たせー!」

HPが、大量の荷物を持って教室に入って来た。元気な声とは裏腹に、目の下にとんでもないクマを作っていた。


「元気だな……それで? 俺らにどんなサプライズが?」

 俺は、HPが何かしらを考えてきた事だけは分かっていた。

 


「まあまあ落ち着いて手塚部長、いいか!? 俺達が、生おっぱいを拝む為には全中に出ないといけないじゃん……これがどれ程なのか。皆はまず、分かってる?」

「「「「……」」」」


「だよな、答えられないよな。簡単に説明するじゃん! まず、地区予選で最低三回勝たないといけないじゃん。準優勝までが、県大会に出場出来る。そして県大会。三回勝つと決勝リーグ出られて、そこで集まる4校でリーグを戦い、上位2チームが関東大会へと進むじゃん」

 HPが先程の口調とは変わって、真面目に淡々と説明をする。


「関東大会に出場し、さらに上位4チームが全中、全国大会への切符を手に入れる事が出来るじゃん」

 やはり、万年一回戦敗退の俺達が望めるレベルの話じゃない。


「この群馬県で全中に出たのは、残念ながらここ数年間無い。東京・千葉・埼玉・神奈川という強豪で全て埋め尽くされているじゃん。つまり、群馬県で一番強くても全中に出る事は、限りなく『難しい』という事。さらに俺達はたった5人しかいないじゃん。誰かが試合中に退場したら、練習で骨折とかしたらその場で一発アウトというギリギリな人数じゃん」

 俺は他の三人の顔を見たが、現実を知ったからか、諦めた顔つきをしていた。聞けば聞く程、不可能な事だと思い知らされる。


 いや、だがちょっと待て。今、HPは『難しい』と言ったか? HPは無理なものは無理。無い。不可能だと即答する男だ。


 俺達のワガママな要求に対して、いつもそうだった。この芸能人に似ている動画ない? このアイドルに似ている動画ない? などのワガママな要望に答えてきたHP。『難しい』という言葉を使う時は、時間はかかるけど、探し出してくれたり、このシーンだけは似ているよ。というような提案をしてくれた。


 つまり、不可能じゃないって事。

 ――おいおい、マジかよ! 俺達が、本当にいけんのか!?


「ハハハハ。HP――。お前、マジか! 正直俺は、いや、俺だけじゃない。他の皆も冷静になって、諦めようって雰囲気だったのに……」

 俺は顔を下げて、深呼吸してから顔を上げた。

「マジで目指せんのか? というよりHPだけはマジで行けると思ってるって事だよな?」

「その提案を、俺はするつもりじゃん。まずはこれを」

 HPが配ったのは、分厚い資料だった。その表紙に書かれていたのは、

『皆で生OPIを見ようぜ~全中までの道~』

一体何ページあるのか、分からない程のボリューム。

 すげぇ。これをたった二日で作ったのか?


「いいか皆。バスケってそもそもどこ発祥のスポーツだと思う? はい。ダンカン」

「あ、アメリカだよHP」

「その通りじゃん。だからこそアメリカが一番最先端なバスケをしてるじゃん。戦略や戦術、練習とか諸々ね。ダンカンから貰った映像を観て分かった事だけど、日本のバスケって、アメリカと比べるとめちゃくちゃ遅れてるじゃん。でだ、俺達はその最先端のバスケ戦術を取り入れて、集中的に練習すれば勝てる可能性がグッと上がると思うんだ!」

 HPは、目を輝かせながら話を続ける。


「得点効率という考え方がある。2点のシュートの成功率が40%。3点のシュート成功率が30%だった場合。どっちを主軸にして攻めた方がいいのか? という考え方だ。答えは3点。100回攻めたとして、2点だと40本入って80点。だけど3点の方は30本で合計90点という事。これが得点効率という考え方なんだが、日本ではまだこの戦略を導入している中学は存在しないじゃん」


「それだけではない。って事ですよね?」

「そうだね篠山先生。バスケは24秒以内にシュートを打たないといけないじゃん? 中学バスケが、平均的にどの位の時間を攻撃に使ってると思う?」

「いや、ちょっと分かりませんね」


「大体だが、13秒~17秒って所じゃん。仮にざっくり15秒だとして、相手の攻撃時間もあるから、1分間に攻撃出来るチャンスの回数は、たったの2回。1ピリオドの8分間で16回。1試合で合計64回、攻撃するチャンスがあるんだよ。だけどこれを倍にする方法がある! 7秒オフェンス。一回の攻撃を7秒以内に完結させる事で、攻撃の回数を単純に2倍にする事が出来るじゃん」

 HPが今話している事は新しい発見だった。そんな事を今まで、考えた事すらなかった。


「ちょっと待ってHP。速く攻撃するって事は、相手に早くボールが渡るって事だろ? 相手にも攻撃回数が増えたら、結局はあんまり変わらないんじゃないのか?」

「良い所を突くね! 流石斎藤プロ。でもそこは逆転の発想が大事。守れる回数が増える! って考えるんだ。仮に攻撃回数が少ない遅い展開だと、前半に開いてしまった点差を後半で取り戻すのは厳しいって事が分かったじゃん。相手の攻撃を止めないと点差って縮まないからね。だけど回数を増やすって事は、点数を入れるチャンスも守るチャンスも増えるって事なんじゃん」

「HPがこの二日間で、めちゃくちゃ調べてきたのかは伝わったよ。結局俺達は、どんな戦術を使うんだ?」


「最初からオールコート・マンツーマン・ディフェンスをして相手にプレッシャーをかけ続け、7秒オフェンスを主軸とした超攻撃型のチームを作る事が出来れば、俺は行けると思う」


「「「「!?!?!?!?」」」」

 HPは、しれっと衝撃的な発言をした。


「面白かった!」

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