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俺達の新学期

すぐる! 今日バスケット部はあるの?」

「あるよー母さん。昼間過ぎからー」



「テーブルにお金置いておくから、昼間は適当に買って食べてくれない?」

「わかったー。じゃあいってきま――イテッ」

 玄関で靴紐を結びながら話している途中で、背中に衝撃が走った。



「なんだ……佳奈かなかよ」

「はっ? 私の事、名前で呼ぶんじゃねーよ。お前、学校では話かけてくんなよ?」

「わ、わかったよ……」

「それと、後から家でて。一緒に歩いてる瞬間なんて、誰にも見られたくないから」

「はいはい……」

「じゃあ、お母さん行ってきまーす」

「いってらっしゃい佳奈」

 妹の佳奈は元気に家を出て行く。佳奈は今日から中学一年生で、俺と同じ中学に通う事になっている。そんな俺は、今年で三年生だった。



 家のドアを開けて外へと出ると、強い風が吹いた。人によっては、4月に吹く風を感じると心地よく、新たな気持ちにさせてくれるのかもしれない。

しかし俺にとっては、365日の中にある通常の一日となんら変わりなかった。



学校に到着して新しいクラスを確認した俺は、教室へと向かう。

――ガラッ。ドアを開けるとガヤガヤしていた教室が静まり、視線が俺に集まった。



「うわ。変態手塚と同じクラスかよ……超嫌なんだけど……」

「ハズレじゃん……」

 そんな声が俺の耳に入ってくる。慣れているとはいえ、凹む。出来るだけ誰とも目を合わせないようにして、黒板に書かれた席にさっさと座った。



「おはよう手塚君」

「――お、はよう」

 挨拶してくれた隣の席の子は、同じバスケ部の女子のエースで、学校の裏掲示板で圧倒的人気を誇る、西野めぐみだった。

 ある意味最悪な席になってしまったと俺は思った。



「西野さん気を付けてね。隣が手塚って最悪じゃん。何かあれば私達で守るから」

「あ、うんありがとう」

 めぐみの近くを通る人は皆、めぐみの心配をしていく。

俺は肩を叩かれた。振り向くと柔道部の主将が立っていた。そんな彼が俺の耳元に顔を近づけてくる。



「お前、めぐみちゃんに何かしたらぶっ殺すからな」

 そう言われ、信じられない握力で肩を握られた。



「え、あ、うん。何もしないって……」

 めぐみの親衛隊なのか、それともただの俺への妬みなのか分からないが、男子と女子からキツイ視線が突き刺さる。



 もう一度肩を叩かれた。俺はため息をつきながら,もう一度振り向く。

「よ! 手塚部長じゃん!」

「なんだ……HPか。同じクラスだったのか」

「そうみたいじゃん。よろしくじゃん」



 彼は塚本神つかもとじん。同じバスケ部の副部長であだ名はHP。

見た目はカッコ良く、一年の時は人気があったのだが、見た目の雰囲気と違い、全然運動が出来なくて、走り方や投げ方などが気持ち悪いとの理由で、好きだった女の子が全員蛙化し、今では残念イケメン代表とまで言われていた。



「おーいお前達! 全校集会があるから廊下に並べ!」

 担任に言われた俺達は、廊下に並ぶと体育館へ向かった。



 何で全校集会なんてものがあるんだよと思いつつ、長い話しを聞くのも面倒臭いから、関係無い事を頭で想像しながら時間を潰していた。

「続いては、今年から新しく赴任された先生の紹介です。西野優子にしの ゆうこ先生です」

 そう紹介された先生が現れると、体育館がざわついた。とにかく若い。という事もあったが、驚く程綺麗な先生で、プロポーションも抜群だった。



「西野優子です。授業は社会を、部活は男子バスケを担当する事になりました。よろしくお願いします」

 挨拶をした西野先生に拍手が送られた。


「チッ。なんで男子バスケなんだよ」

「は! ありえねーだろ」

 パチパチと拍手が鳴っている中で、そんな声がチラホラ聞こえてきた。全校集会が終わって教室に戻る途中、HPが話かけてきた。

「やったじゃん手塚部長」

「そうだなHP! まさか俺達の顧問とは思わなかったな!」

「これで、ちっとは部活が楽しみになったじゃん」


 教室に戻ると担任から簡単な挨拶と今後の予定などの軽いHRが終わると、今日は下校となった。

 学校から家に帰り、部活に行く準備を整え、テーブルに置かれたお金を握ると、再び学校へと戻る。校庭を抜けて体育館へと向かう。すでにダムダムとドリブルしている音が聞こえた。

 もう練習しているのか? 流石女子バスケだな……。


 体育館に入ると、すでに汗をかいて練習している女子バスケ部の姿と、床に寝そべってダラダラとストレッチしている、男子バスケ部の姿があった。

「おーい手塚部長こっちこっち。遅いじゃん」

「わりぃ。わりぃ」

 俺達は、恒例になっている女子バスケ部との試合の為にアップを始めた。



 ――ビーーー。

「お互いに礼」

「「「「「ありがとうございましたー」」」」」

試合が終わった。たった2ピリオドで60-5という大敗を喫した。


「さあ終わった。終わった。部室に行こうじゃん」

 部室で汗を拭いて着替え終わると、それぞれ部室で遊び始めた。


「あーもう! ダンカン俺の事を助けてよ!」

「手塚部長が下手過ぎるんだよ。無理だよ。今の場面で助ける事なんて」

「斎藤プロ手加減して下さいよ~」

「無理だね。俺はいつだって手加減なんてしないよ?」

 本来ならば外で練習していないといけないが、ゲームやトランプをして部室でサボっていた。


 ――そんな時だった。

ガチャ。

「やあ! 青少年達! 朝からおっ立ててるか?」

 なんとも下品な言葉を言いながら部室に入って来たのは、西野先生だった。全員がドアを開けた西野先生に視線を移し、時が止まっていた。


「なんだ? なんだ? 私の美貌に見惚れてるのか?」

「ありえない先生の過激な登場に、引いてるだけですよ……」

「何でサボってるんだ手塚。外で練習じゃないのか?」

「何で? って別に……」

「元気がないな! 元気があるのは○ンコだけか?」

 西野先生は、下を向いて頭を掻きながら発言した。


「先生……セクハラっすよそれ……」

「セクハラかぁ。へぇ~」

 西野先生は、胸ポケットから手帳を取り出した。


大村一樹おおむら かずき身長186センチ、あだ名はダンカン。アメリカのバスケリーグ、NBAのレジェンドスター、ティム・ダンカンが好きで、プレーも見た目も似ている事から付いたあだ名。年上好きのムッツリすけべ。バスケ部の中で一番基礎が出来ている。続いて斎藤一さいとうはじめ身長175センチ、あだ名は斎藤プロ。勝負事がとにかく強く、口癖がラッキー。1年の入学式の時に西野めぐみに一目惚れをしてバスケ部に入った。」

「「「「えっ?」」」」

 斎藤プロを見ると、目が見えない程前髪が長く、普段から全く表情が読めないポーカーフェイスの斎藤プロが、トランプを持っている手が震えて、トランプがパラパラと地面に落とす。それを拾い上げようとしても、拾い上げる事が出来なくなる程動揺していた。


「斎藤プロ……めぐみちゃんの事好きだったの……」

「な、何を言っているんだHP。俺がめぐみちゃんを? あ、ありえないでしょ……」

「「「「へぇ~」」」」

 初めて見た斎藤プロのその姿に、俺達は事実だと理解した。

それよりも、何でそんな事を知っているんだこの先生は。


堀内拓也ほりうちたくや身長180センチ、あだ名は篠山先生。女子生徒の写真を盗撮しては、男子バスケのグループメッセージにその写真を載せているオタク。その髪型は……」

 おいおい先生、大丈夫か?

 

変わった髪型と丸い眼鏡をかけている篠山先生。その見た目とオタクだった事もあり、一年の時に髪型を馬鹿にされた事があった。馬鹿にしてきた男を回し蹴り一撃で失神させた事件があったのだ。


「ブルースリーか?」

「先生! リー師匠を知っているんですか?」

「そりゃあ、知っているさ」

「感激です」


「次は塚本神つかもとじん。身長172センチ。男子バスケ部の副部長であだ名はHP。ヘンタイプランナーの異名で、男子バスケ部が望むエロ動画や好むであろうエロ動画をすぐに教えてくれる事からつけられたあだ名。生粋のスケベ」

「先生! 何で俺のそんな情報を知ってんすか!?」

 西野先生は、HPの顔を見るとニヤッとした。


「そして最後に手塚傑てづかすぐる。身長170センチ。バスケ部の部長であだ名は手塚部長。1年生の時、女子生徒のアルトリコーダーの連結部分に○ンコを入れようとしていた所を、他の生徒に見られて大問題になり、それ以来学校中から嫌われ、顔写真まで出回り、指名手配のようになっている超の付くド変態。この五人しかいないのが、赤西あかにし中の男子バスケ部だな」

「な、な、なんでそんな事まで知ってんすか西野先生。まさか脅迫っすか?」

 俺は率直な疑問をぶつけた。


「部活に対してやる気がないみたいだな。さっきの試合も何だあれ!」

「何だあれって言われても……。相手は全中に出場するような女子バスケ部っすよ? 強いのは当たり前だし、俺達は万年地区予選一回戦敗退。勝てないでしょう普通に。それに、俺達がやる気出して女子チームに怪我でもさせたら、それこそ問題っすよ?」


「なるほどな。ならお前達は、何で部活なんかしてんだ? どうすればやる気出すんだ?」

「先生……。いまどき熱血とか時代遅れっすよ! それに俺達、もう3年っすよ? 今からやる気だしたって無駄でしょ?」

「時代遅れなんて言われる程、私は歳を取ってないけどな」

どうせならと、完全にふざけた発言をしてみた。


「じゃあ先生。俺達に生おっぱい見せて下さいよ! 生おっぱい揉ませて下さいよ! そしたら俺達もやる気出して、全中も目指したらぁーと思いますよ。ねえ皆」

「流石はド変態、手塚だな! ならちょっと待ってろ!」

 西野先生はそう言うと、部室を出て行った。


「おい手塚部長。お前すげーじゃん! あんな事普通言えないじゃん!」

「いやだって、なんかあの先生、熱血で面倒そうだったしさHP」

「でも、さっき言われた私達の情報を、もしバラされたら、まずくないですか?」

 篠山先生の言葉に俺はハッとした。


「考えてなかったんですか……全く」

「でも、西野先生って綺麗だよね」

「ダンカンは本当に、年上好きじゃん」

「でもさ、俺達でも知らない様な情報を何であの先生、知ってんだ?」

「そうだよなぁー。まさか斎藤プロがなぁ……」

「な、なんだよ。別にいいだろ! それに、手塚部長やHPにそんな目で見られたくねぇ」

「確かにそうですねぇ」


「ちょ、ちょっと優ちゃん。一体なに?」

「いいから付いて来いってめぐみ」

 外から声が聞こえてくると、西野先生が西野めぐみを部室に連れて来た。


「ほら! お前達の好きな西野めぐみだぞ? お前等どうせ、めぐみを夜な夜な想像したりしてんだろ?」

「ちょっと何言ってるの優ちゃん!」

「学校では先生と呼べめぐみ。いいかお前等、良く聞け! やる気、出るんだよな!? なら全中に出たら私とめぐみの生パイオツ、見せて揉ませてやるよ!」


「篠山先生ーー!」

「はい! 手塚部長!」

「今の録音してるか!?」

「勿論しています」 

「西野先生。後で嘘でしたって言わないで下さいよ?」

「私に二言はない。約束しよう」

「「「「「やったーー!」」」」」

 俺達は、テンションが上がり過ぎて飛び跳ね、円陣を作り始めた。


「「「「「おっ! おっ! おっ! おっ! おっ! おっ! おっ!」」」」」

「お前ら、うるせーぞ」

「「「「「おっ! おっ! OPIおっぱい! OPIおっぱい!」」」」」

「「「「「ウェーイ!!」」」」」


 荷物を持って部室を飛び出し、俺達は駆け出して行く。


「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。

面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!

ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


していただいたら作者の執筆のモチベーション上がっちゃいます。


何卒よろしくお願いいたします。

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