表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/38

29話 屍人兵団<アンデッド・カンパニー>

 地下三階。入り込んだメタブルーのうち何匹かを始末すると、その兵士は小銃のマガジンを付け替えた。報告では、メタブルーの駆除はかなり進んでいるようだ。彼らは追い立てられ、そして孤独に死んでいる。煮凝り状の死体を踏み潰しながら、兵士たちは長い廊下を歩いていく。途中の部屋は全て検められ、潜んでいたメタブルーも残さず駆除された。


「時間は?」


「あと三十分を切った。信管を抜かれた爆弾の、再設置も進んでいるらしい」


 同僚に時計を見せると、虎柄の兵士は気を緩ませた。これでどうにか、一段落付きそうだ。


 早くも戦勝ムードの彼らであったが、すぐに気を引き締め直した。前方から、仲間の悲鳴、そして交戦を知らせる銃声が聞こえたからだ。


「どうした!」


「待て、罠かもしれん」


 悲鳴を上げ、獲物を騙し討ちする。幻夢境にはそういう原生生物が居ると聞くし、特に相手は変化能力を有するデミ・ショゴスだ。罠でないと考える方が難しい。


 彼らは慎重に、歩みを進めた。銃声と悲鳴は、相変わらず聞こえていた。


 角を曲がった先、ウルタールの兵士が二人、通路に立っていた。交戦していたのは彼らであったようで、周囲には硝煙の匂いが広がっていた。


 声をかけるよりも先に、兵士はスタングレネードを放り投げた。それは地面に落ちると爆発し、メタブルーの体を破壊する高周波を放った。


 しかし、兵士の体は崩れない。代わりに、彼らはゆっくりと倒れ伏した。赤い血溜まりが、広がっていく。


「え…」


 困惑を隠せないまま、兵士たちは壁に隠れた。そしてそっと、様子を伺う。倒れた兵士たちの死体を乗り越えて、血に濡れた白い鎧が行進する。それは、イリスの公安部の装備だ。メタブルーのみならず、公安の侵入を許したか―そう思った彼らは、通信器を起動した。しかし通信が繋がる前に、兵士の片方が悲鳴をあげた。廊下に響いた軽い音は、銃声。気がつけば、彼らは囲まれていた。


「こちらロダン少尉。応答を。どうした」


 枯れ木を打つような音と共に、兵士二人は倒れ伏した。公安の兵士は虚ろな瞳で、通信器を踏み潰す。死人たちの兵団(アンデッドカンパニー)は、行進を続ける。中身のない彼らには、恐れるものは何も無い。


「居たぞ!魔女の軍団だ!」


 小銃の斉射をものともせず、回避行動も一切ない。只管、真っ直ぐに。一人、また一人と仲間を増やしながら、彼らは地下へと進んでいく。


「今迎えに行きますよ、海咲さん」


 メタブルーを含む―白骨の軍勢を従えたのは、災厄の魔女。薄暗がりに琥珀色の瞳を光らせ―今此処に、不死(しなず)の姫君は蘇った。


「(大人の)キスの一つくらいは、許してくれますよね…」


 そう囁いた彼女に、白猫は怪訝な視線を向けていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ