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55/66

9.1

「……そ、それはそれとしてですね」

 サラは人生初の行動を取った。

 黙ってじーっと見つめられるのが気まずくて、自分から会話を振ったのである。

 これまでの人生において、どれほど相手との沈黙が気まずかろうとも、天気だのニュースだの噂話だの、得る情報のない話を自分からしようなどと、絶対にできなかった。

 が、今、サラがしている話は得る情報が100%ない。

「えーと、レイ、すごく見られているんですが」

 そんなもの、見ているレイ本人が一番知っている情報だ。口に出す必要性はまったくない。

「サラ」

 レイは真剣な表情で言った。

「私は永遠にサラだけを見ていたい」

 重い! 重いと理性ではわかっているのに、サラの心臓のバクバクという音は止まらない。このままご臨終かというレベルに高鳴っている。

 だからそのまま黙るな! 本気で永遠に見ているつもりか!

 あなたは。

 私たちは、前に進まねばならないのですよ!

 サラは、スッといつもの無表情に戻った。

「レイ、確認していただきたいことがあるのですが」

「なんでもする!」

「なんでもするって簡単に言わないように。少し、スコープを調整します」

 鎮まれ心臓。前に進むときは、潮に乗らねばならないのだ。

 今、潮が来ている! 私たちが、先に進むための潮が!

 この潮を逃すな!

 スコープを調整し、目標物が見えているのを確認して、スコープをレイに交代する。

 いやだから四つん這いになるな! 別の方向で心臓が高鳴る!

 サラの葛藤をよそに、レイは怪訝な声を上げた。

「サラ、これ何?」

 サラがレイに見せたのは、例の石碑である。

『心悪しき者、皆竜と化せ』

 と、彫られた石碑だ。

「ええ、奇妙な文章でしょう? 心当たりはありますか?」

 レイは表情も怪訝に眉を寄せ、サラの方に振り返った。

「石が転がってるだけで、文字なんてどこにもないよ?」

「え」

 サラはあわててレイを押しのけ、スコープをのぞきこむ。

 さっき確認したときと同じように、くっきりと石碑に刻まれた文字が読める。

『心悪しき者、皆竜と化せ』

 おかしい。

「私はなんてバカだったのでしょう」

 スナイパーにあるまじき見落としだ。

 キスで頭がわいていたとしか思えない。

「サラ?」

 レイがどうしたの? と肩を抱いてくる。

「すみません。自分を恥じているだけです」

 暗視スコープのぼやけたモノクロの視界で、石碑に刻まれた文字が昼間と同様に読めるわけがないではないか。

「レイ、あの石に、私にしか読めない文字が見えると言ったら、理由はなんだと思いますか?」

 レイはんー、としばらく考え、言った。

「ラクール一族ゆかりの石碑だったりするのかなあ」

 考えを聞いたサラは即断した。

「ありがとうございます。今からあの石碑を狙撃します」

 

ついに石碑の謎が明かされる!(気まずかったから……)

明日6時にラストまで全話掲載します。

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