8.7
タンタン、と二人が塔の上に上がって行く。
塔に上る階段はらせん階段だが石造りで、壊れないようしっかりと造られている。
母君が、いつ帰って来てもいいように、壊された塔をレイが造り直したのだろう。
塔の上、今はサラの部屋になっている部屋も、きっと、居心地がいい部屋なら、帰って来た母がもう置いていかないでいてくれるかもしれないと。
大きな寝心地のよい寝台や、インテリアをそろえて。
それでも、もう置いて行かれたくないから、内側から出られないように造った。
立派な塔が、幼いレイが必死に組み立てた、積み木の城のようにサラには見えた。
ちゃんとできたら、お母さんはよろこんでくれるかなあ。
部屋の扉を開けると、背後からついてくるレイは、謝った。
「ごめんね、サラ。閉じこめて。もう置いて行かれたくなかったんだ」
謝りながら、レイの手は、サラのローブの裾をつかんでいた。
サラは少し、意地悪に笑った。やることがあまりにも、幼いから。
「過去形ということは、もう置いて行っていいんですか?」
ローブをつかむ、レイの手が震えた。
叫んだ。
「いやだ! どこにも行かせない! 置いて行かれるぐらいなら、二度と出られないように閉じこめる!」
レイの叫びを聞いたサラは、意地悪い笑みを浮かべたまま振り返り、人さし指でレイの喉からあごにかけて、下からつーっとなぞってやった。
「閉じこめたければ閉じこめればいいですよ。誰の命も、何の命も、あなたの命も、すべての命の生殺与奪を決めるのは、スナイパーたる私ですから」
レイが、涙とは別の方向で頬を染めるのを見て、サラの背筋にゾクゾクとした喜悦が走った。
私の男が、あまりにもかわいい!
ランプに照らされたレイの顔が、少し恥じらいを見せる。
「サラ……その顔、他の人に見せないでよ」
サラは口元に手を当てて返す。
「レイこそ、自分の身が大事なら、その顔は他人に見せないことですね。あなたに何かされたなら、私、そいつの頭をブチ抜きますので」
閉じこめると執着してくる男の、命まで皆私のものだ。
サラの喜悦が通じたのか、レイのローブをつかむ手がゆるむ。
安心したようですね。
これで安心するところが、なおかわいいというサラの胸中まで気づいてはいなようで、レイは恥じらった表情のまま、わずかに視線をそらした。
ローブをつかんだレイの手を、サラがつかんで強く引く。
もう、ランプを持っても手が震えない。
「サラ!」
「レイ、いいものを見せてあげますよ」
サラは板が打ち付けられた窓を指さした。
そして背中に背負ったライフルを、抜いた。
束縛彼氏とドS彼女ですね、コレ。かわいそうはかわいいので母性を刺激されてる、という話である、はず。
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