8.1
「あっ、あのっ……」
レイはうわずった声で「正解」を探す。
着こんだロングコートはあちこちが裂け、中に着ているジャケットや、さらに内側のシャツが、裂けた布の間から覗いている。
裂けた服の布には、血がにじんでいる。
青白いほおはすっかりこけてしまい、目の下のクマは深くなっている。
レイは、サラの怒りにうわずった声のまま、やっと答えた。
「ごめんなさい、迷惑、かけちゃって」
サラは本気で怒鳴りつけた。
「あなたは迷惑じゃなくて、心配をかけたんです!」
サラの視界がにじみ、ボロボロと涙があふれてきた。
レイの細腰に強く抱きつき、サラは破裂したように大声で泣く。
「どれだけ心配したと! どれだけ心配させるんですか! あなたが大事だということを、お願いだからわかってください!」
レイは、手袋越しに強く、サラを抱きしめ返した。
「ごめん、ごめんね、サラ」
サラは泣きながら叫ぶ。
「利用したいならすればいい! あなたが自分をないがしろにするより、利用された方が全然ましです! 私はあなたが、誰よりも大事なんだから!」
レイはハッと驚いた。
「知ってたの……? 私が利用しようとしてるのをわかってて、それでもずっと、どこにも行かないでいてくれたの……?」
サラは黙って、うなずいた。
涙で真っ赤になった頬が、レイの胸から見えている。
「サラ、そうなんだったら、そうなんだったら私は、もうサラを利用なんかできないよ」
レイの抱きしめる腕が強くなった。
「心配をかけるってつらいことなんだね、サラ。サラのおかげでわかったよ、私が苦しい思いをしても、喜ばないのが”まとも”なんだ」
サラを強く抱きしめながら、レイは、はっきりと心を言葉にした。
「私はサラを愛してる」
サラも、はっきりと心を言葉にした。
「私も、レイを愛しています」
二人の魂が通じ合って震え、共振し、ぬくもりを生み出す。
「愛ってあったかいんだね、サラ」
「ええ。あなたがあたたかい思いをしてくれれば、私もあたたかくなれます」
レイがポツリと口に出した。
「おなかすいたなあ……。みんなが持ってきてくれたもの、食べていい?」
サラはやっと顔を上げ、やわらかく微笑んだ。
「ええ、ごはんにしましょう」
レイも、やわらかい笑みを浮かべた。
「食べながら話してもいい? 私に何があって、何をしようとしてたのか」
サラはうなずいた。
「ずっと聞きたかったことです」
ふふ、とまた微笑み合う。
「ゴホーウビ! ゴホーウビ!」
二人の世界に、コダマガラスの鳴き声が割って入った。
「こいつ……! さっきは助けてくれたけどさあ……」
「初号機! 新しく言葉を覚えたのですね!」
室内に飛びこんできた初号機は、テーブルに乗ったローストビーフの上で、「ごほうびはこれがいい!」と言わんばかりにホバリングした。
「ゴホーウビ!」
サラは、また少し笑った。
「私たちにも、ご褒美があってよいでしょう。早くごはんにしましょうね」
異世界恋愛ジャンルの最大フィーバータイム! 告白回!
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