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35/66

6.2

前書きに本文を書いてしまっていたのを訂正しました。ご不便をおかけして申し訳ありません。

 カブとにんじん、ミミアリマムシをよく煮込めば。

「ミミアリマムシのポトフです」

 サラがスープボウルによそった汁に、レイは少しすまなげな顔をする。

「ありがとう。ごめんね、まだちょっと具は食べられなくて」

 ポトフのメインは具材である。やわらかく煮込んだ具材をサラに盛り、ナイフとフォークで食べるのが本式だ。

 知識としては知っているらしい。二日酔いによる胃の不調は、今身をもって学んでいる最中だ。

「レイ、具材は明日食べればいいのです。まずは一口飲んで見てください」

 起き上がったレイが、スープボウルを受け取る。

「あったかい……」

 スープボウルのぬくもりを手のひらで味わったあと、レイはスプーンをスープボウルに入れた。

「あつッ」

 スプーンを口に入れようとして、スープの熱さに失敗し、飲み損ねたスープがわずかにレイの口の端からたれた。

 ちろりと存外厚い舌が、くちびるからのぞく。

 赤く染まった舌が、おそるおそるスプーンをなめる。

 自分の行儀の悪さに気づいたレイは、はっと頬を赤らめて舌を引っ込めた。

 一口、飲む。

「!!」

 レイモンドの顔が驚愕に満ちた。

「サラ、これ、何? おいしい、おいしくて、これ、何?」

 狙いより喜び方が大きいので、サラの心が少し晴れる。

「ミミアリマムシで一番おいしいのは、肉と骨から染み出る()()なのですよ」

「出汁!?」

 ミミアリマムシは肉食動物だが、キノコ類を好んで食べる習性がある。何種類ものキノコを胃の中でブレンドし、全身にキノコの風味と成分を染みつかせるのだ。

 通常の動物と違い魔獣であるため、キノコの成分まで体内に残る。

 結果、ミミアリマムシを煮込むことで、動物性の出汁と数種類のキノコ出汁がブレンドされた、うまみ出汁ができあがるのである。

 しかも今回のポトフには、野菜の皮から出る出汁も追加されている。わずかな塩気とコショウの味付けもある。

 ミミアリマムシのポトフにかぎっては、具ではなくスープがメインなのだ!

 ふうふうとやけどせぬようにレイは出汁を味わう。

 わずかに口の端に雫を残し、レイはスープボウルを空にした。

「おいしかったー、サラ、なんだか元気が出てきたみたい」

「それはようございました」

 レイは起き上がって、上着を羽織った。

「ごちそうさま、サラ。じゃあ、自分の部屋に戻るね」

 部屋を出て行く後ろ姿も、しっかりしている。見送ったサラは、まだ彼のぬくもりが残るベッドに潜り込んだ。

「利用……されていなければ、レイがここまでしてくれる理由がないのは理解できる。でも、私の心が、レイに問いただすのを嫌だと言っている」

 ベッドに残っているレイのぬくもりが、サラにうつってほしいと願い、サラはベッドにより深く潜った。

「きっと、恋をしているせいなのでしょうね。本当にめんどうくさいものです、恋愛とは。

 問いただしたくないくせに、どう利用したいのかだけでなく、なぜ、利用したいのか知りたい。不必要な情報だというのに、どうしても知りたいです」

 初号機もベッドに潜り込んできた、くちばしがサラの手に触れる。

 ご主人様、だいじょうぶ? と聞いているかのようだ。

「めんどうなことになっているだけですよ……」

本日のメニューは「魔獣ミミアリマムシのポトフ」 これは美青年がポトフを賞味しているシーンです。極めて健全なシーンでございますので、不健全にみえるのはあなたの性癖の問題です。

毎日更新。本日からしばらく6時と18時の二回更新です。

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