6.1
「サラを責めないで。飲んだ私が悪いんだ」
「何をかばうかのように言っているのですか、実際あなたが悪いんですよ」
「ごめんなさい……」
「レイばかりの責任じゃありません、すすめた私が悪いんです」
「何をかばうかのように言っているのですか、実際あなたがすすめたんですよ」
「すみません……」
デュマ医師の叱責を、ベッドに横たわったままのレイと、ベッド脇に立っているサラはうなだれて聞く。
レイが寝ているのはサラのベッドで、サラ自身によって寝かせられたものだ。泥酔して眠りこけているレイを引きずり、ベッドに寝かせたのである。
サラは室内からタエコを呼び、くノ一たるタエコはすみやかにサラの声を聞きいて駆けつけ、デュマ医師を呼び、デュマ医師は急性アルコール中毒の処置をして一時帰宅。
三時間経った現在。様子を見に来るとレイが意識を取り戻したため、医師はすみやかに叱りつけたわけである。
「急性アルコール中毒は若者につきものですな。なぜだかわかりますか? いい年をしてやらかしたら、恥ずかしくてしゃれにならんからです。世間の笑いものの年寄りになりたくなければ、バカな真似は若いうちにでやめることですな」
叱りながら点滴の針を抜いたデュマ医師は、医療カバンにに医療器具一式を片付け始めた。
「酒なんぞくだらん液体が飲めるのなら、そこで煮込まれているスープを飲むことです。ああ、これは我らがふるさとに失礼、伯爵」
タエコがあわてて口を挟む。
「そこで煮込まれているのは魔獣の肉ですよ?」
「ワインに比べたら天上の食物ですよ。あなたの主人に失礼、領主様の忠実なるメイド殿」
コートを着こんだデュマ医師は、カバンを手に部屋を出よとして、去り際に行った。
「伯爵、あなたが今回生きのびたのは、食事を摂っていたからです。ラクール嬢を大事になさい。自分の体もね」
タエコがデュマ医師を見送って行く。
「サラ、サラのおかげだよ、ありがとう」
「いえ、発端は私なんですが」
ベッドに寝たまま礼を言うレイに、サラは背を向ける。
「どうしたの? サラ、元気がないよ?」
「私のせいですからね、あなたが寝こんでいるのは」
「違うよ、サラは悪くない」
レイの口調が、妙に必死さを帯びた。
「サラは悪くないよ、気にしないで」
お母さんは怒られると死んじゃうんだ。
サラは少し、眉を寄せながら微笑みを作った。
「大人は自分がした結果の責任を、感じなければいけないのですよ」
サラは、本当はこのあわれで幼い青年に、問いたかった。
私を利用しているってどういうことですか?
問いたい気持ちより、問いたくない気持ちの方が強かったので、サラは話題を変えた。
「吐き気はしますか?」
「吐き気より頭が痛い。後、喉もかわいてる。もう起きられるよ、自分の部屋に帰る」
サラは、レイに微笑みを作ったまま問うた。
「鍋……まあ鉄兜ですが、煮込み終わりましたので、少し食べませんか?」
キスとか色々ありましたが、急性アルコール中毒でぶっ倒れた辺境伯と、飲ませたスナイパー両者医者に怒られました。
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