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5.5

・解説:アルハラはいかにして起こるか

 人間には各々、アルコールに対する耐性が異なる。

 原因は遺伝、人種、生活習慣等多々あるが本稿では省略。

 アルコール耐性が高い人間は、飲酒により気分が向上する。逆に低い人間は、飲酒により体調が悪化する。

 ここまでは、言わずもがなであろう。

 アルハラとは、耐性の有無ではなく、想像力の限界によって生ずる現象である。

 被害者には理解しがたい思考だが、アルハラは好意から発生しやすい。

 前途の通り、アルコール耐性が高い人間は、飲酒によって気分が向上する。

 しかしアルコール耐性が高い人間には、低い人間が飲酒により体調を悪化させる速度と酒量が想像できない。

 よって、「自分だけいい気分になっているのは、一緒にいる相手にとってかわいそうだ」「少しぐらい酒を飲んだだけなら、気分よく酔えるだろう」と、思い込みによって行動してしまうのである。

 賢明なる読者諸氏はもうおわかりであろうが、休み時間に読書をしている同級生を「あいつも仲間に入れてやろーぜ!」と、ドッヂボールに誘ってしまう体育が得意な小学生と、同種の思考と迷惑性である。

 なお、今回の場合に限り「回し飲み」と「間接キス」という二者の見解の違いも生じていることにも触れて、物語へと戻したく思う。


 生き血の赤ワイン割りを一口飲むと、レイは完全に無言になった。

 サラの「おいしくなかったですか?」の問いにも答えず。完全に沈黙した。

 サラがレイからグラスを受け取ると、尻もちをつくように座りこんでしまう。

「え?」

 サラはグラスの中身を確認するが、どう見ても一口しか飲んでいない。

「レイ?」

 まさか、ミミアリマムシの毒が混入していたのか、と焦るサラだったが、症状がまるで合致しない。

 全身が赤みを帯び、発汗している。目の焦点があっていない。

「レイ、レイ!」

「しゃ……しゃりゃ?」

 ろれつが回らず、体が弛緩して立てないらしい。自ら症状を訴えることもできない。

 これは撃沈! いや泥酔!

 サラは慌てて水をコップに注ぎ、レイに持たせるが、レイは口元まで運べずにこぼしてしまう。

 すぐに二杯目をくんでレイの口元まで持っていくが、うまく口から水が入らない。

 まずい、急性アルコール中毒のおそれがある!

 サラはレイの体を横抱きに抱えると、コップの水を自らの口に含んだ。

 力の入っていない体はぐにゃぐにゃとして重く、「ああ、重くなれたな」などと場違いな感慨にふけりかけるも、それどころではない。

 真っ赤に染まった顔は青ざめ始めている、目はうるみ、助けを請うようにくちびるが開いた。

 瞬間、サラはレイのくちびるに自身のくちびるを合わせ、自分の口から水を飲ませた。

 一口水を飲むと、水を飲まねばと体が理解したのか、レイのくちびるがまた開く。サラは何度も、口移しで水を飲ませるのをくり返した。

 青ざめかけたレイの顔が、赤に戻っていく。

 当座の危機は脱した。タエコを呼んでデュマ医師に処置を――。

 レイを床に寝かせ、立ち上がろうとする。ぐい、とローブの裾が引かれた。

「ごめん……サラ……」

 混濁した意識で、レイはサラのローブの裾を引いている。

 彼は、もう一度謝った。

「利用してごめん……ごめんなさい……サラ……」

キスした瞬間爆弾発言(キスより救命措置感強くないですか? 相手がレイモンドだからしょうがない)

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