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5.1

 レイはもう一度、サラを強く抱きしめてきた。

「サラ! 好き! 好き好き大好き!」

 大型犬が飛びついてきたような格好になり、サラは後ろにひっくり返った。

 レイモンドはもう一度「大好き!」と声を上げ、ひっくり返ったサラに覆い被さる形になる。両手を突っ張っているので、体重はかからないが、レイのまつげの立てるバサバサ音まで聞こえそうな距離だ。

 こけていた頬もふっくらしてきたな、顔色もよくなった、でも、目の下のクマは消えてない。染みついて一生消えないかもしれない。

 表情も、いい。心から喜んでいる。

 が。

「近い!」

 サラの顔は再び真っ赤になり、レイを片手で押しのけた。えび反るようにのけられ、レイモンドは尻餅をついた。

「いたた……」

 尻もちをついたレイを、サラは真っ赤な顔のまま見下ろし、説明を始める。

「ラクール一族に、蛇使いの異能を持つ者がいます。妹の取り巻きとして王宮に入りました。妹がまたも私の命を狙ったのでしょう。理由は国王陛下の信用を失った逆恨みです。

 よろしいですか。屋敷の付近に蛇使いが潜んでいます!」

 一気に説明を終えると、レイは頭を尻餅をついたまま頭をかいた。

「わかった。それなのに、ここにいてくれてうれしいよ」

 そして、少し残念そうに言った。

「でも、今のサラはすごくかわいいから。呼ばなくちゃいけないのが残念だよ」

「呼ぶ?」

「うん」

 サラの疑問は見ればわかると、レイはパンパンと手を叩いた。

「タエコ!」

 レイが呼んだ瞬間、二人の傍らにメイドが現れ、ひざまずいた。

「え……?」

 サラは珍しくあ然とする。

 メイドは片膝を立て、片手を床につける奇妙なひざまずき方で、サラに頭を下げている。「奥様、名乗るときが参りました。わたくし、かつては極東の国においてくノ一として働いておりましたタエコと申します。ペトルシアにて抜け忍となり、旦那様にかくまっていただいております」

 くノ一……忍者!? ちょっといきなりファンタジックな存在が出てきすぎではないか!?

 返答に窮しているサラを置き去りに、レイはメイド――タエコに命じる。

「屋敷付近に蛇使いの暗殺者がいる。範囲は」

 サラは慌てて蛇使いの異能の、有効範囲を思い出す。

「半径300メートル」

「300メートル付近から現在逃走中だ。見つけて、えーと、ちょって待って」

 レイは胸ポケットからメモ帳と万年筆を取り出し、何事か書き付けてメモ用紙を破る。

「これを渡して」

 メモ用紙をレイから受け取ったタエコは、ひざまずいたまま「拝命いたしました」と口に出し。

 同時に、姿を消した。

「……」

 ホントに忍者だ……。

 タエコがひざまずいていたはずの床を、サラは手ではらったりこすったりしてみたが、いなくなったとしか云えなかった。レイは自慢げである。

「びっくりした? タエコってすごいでしょ」

「ええ、びっくりしました」

 と、しか答えようがない。忍者って。

「あの、でね、サラ……こんな時になんだけど……、その……よかったら」

 レイは鉄兜に残っている、トマトスープを指さした。

「もっとちょうだい?」

いきなりくノ一が出てきたので、忍者とかファンタジーすぎるだろうとドン引きするスナイパー(奥様、この世界に存在しないのはスナイパーの方でございます)。

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