第七話
2月27日
自動車メーカーのインターンは、予想通り、落ちた。
「なんだよー、また寿司屋に呼び出して」
つっつーが、手を頭の上に持っていきながら話す。
「そうだよー、おれたちも忙しいんだよー、まあ、颯太に呼ばれちゃ、くるっきゃ無いけど」
へへ、とかっちゃんは笑う。
「おれ、お前らに伝えたいことがあって、というか、相談したいことがあって」
つっつーは、手を机の上に置く。
おれは。
あの日。
少しだけ。
ほんの少しだけ。
傷ついてしまった。
でも。
つっつーと、かっちゃんとは。
もっとずっと、友達でいたい。
そう、思っているんだ。
「ねえ、つっつー、かっちゃん。おれはさ、今、就職活動で忙しいから、彼女とか、本当は作る暇、無いんだ」
かっちゃんが、ぽかんとする。
「え、でも、前告ったって・・・・・・」
「その時はまだ、こんなに内定が出ないなんて思ってなかったんだ。でも、エントリーシートを毎日書いて、それを否定させるのは、とってもつらい。そんな中で、恋愛なんて、おれも、本当は、忙しくてできないんだよ。だから、彼女を作れ、とかっていうのは、言わないでほしいし、まえ、言われたこと、ちょっと傷ついちゃったかも・・・・・・」
そこまで話して、おれは、俯いてしまった。
「顔を上げろよ」
つっつーが、そう言ってくれた。
顔を上げた先には、つっつーとかっちゃん。
つっつーが、口を開く。
「ごめんな、おれ、知らずに傷つけてしまってたんだな。おれ、ずっと颯太と友達でいたいし、就職活動、応援するよ」
かっちゃんが、少し俯く。
「おれも、ごめん。全然、颯太の気持ちに気づけてあげられなくて。で、颯太は、どういう仕事に就きたいって思っているの?」
そうか。
その質問が、くるのか。
おれに与えられたチャンスは、あと一回。
それでも。
ここで。
言うのか。
いや。
大丈夫。
2人なら、受け入れてくれるはず。
「漫画とか小説とかを、アニメとか映画、ドラマにする、ライツ事業部って言う部署が、出版社にはあってね。それを、目指してる」
つっつーが腕を組む。
「メディア化ってこと?」
「そう」
かっちゃんが、少し間を置いた後に、目を見開き、口を開く。
「めっちゃいいじゃん!おれ、好きな漫画がアニメになった時、最高の気分なんだよ!でも、そんな部署があるなんて知らなかったし!めっちゃいいじゃん!」
つっつーは、腕を組みながら話す。
「確かに、面白そうだよね」
「2人とも、共感してくれるのか・・・・・・?」
「ああ!」
「当たり前よ!」
よかったー!!!
2人が、おれの夢を素晴らしいって言ってくれて。
「おれ、夢なんだよね。そう言う仕事に就くの」
かっちゃんが、おれの目をじっと見つめる。
「夢は、でかいほうがいい。本当にでかい方がいい。おれも、お前とおんなじように、でっかい夢があるからよ」
「・・・・・・そっか!」
「ああ!当たり前よ!」
おれ、2人と友達で、良かった。
「明日、TOEICを受けに行くんだ」
そう言うと、かっちゃんが、え、って言う顔をする。
「おれも、TOEIC受けるよ!」
「え、マジで!?」