表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/25

第七話

2月27日

 自動車メーカーのインターンは、予想通り、落ちた。

「なんだよー、また寿司屋に呼び出して」

 つっつーが、手を頭の上に持っていきながら話す。

「そうだよー、おれたちも忙しいんだよー、まあ、颯太に呼ばれちゃ、くるっきゃ無いけど」

 へへ、とかっちゃんは笑う。

「おれ、お前らに伝えたいことがあって、というか、相談したいことがあって」

 つっつーは、手を机の上に置く。

 おれは。

 あの日。

 少しだけ。

 ほんの少しだけ。

 傷ついてしまった。

 でも。

 つっつーと、かっちゃんとは。

 もっとずっと、友達でいたい。

 そう、思っているんだ。

「ねえ、つっつー、かっちゃん。おれはさ、今、就職活動で忙しいから、彼女とか、本当は作る暇、無いんだ」

 かっちゃんが、ぽかんとする。

「え、でも、前告ったって・・・・・・」

「その時はまだ、こんなに内定が出ないなんて思ってなかったんだ。でも、エントリーシートを毎日書いて、それを否定させるのは、とってもつらい。そんな中で、恋愛なんて、おれも、本当は、忙しくてできないんだよ。だから、彼女を作れ、とかっていうのは、言わないでほしいし、まえ、言われたこと、ちょっと傷ついちゃったかも・・・・・・」

 そこまで話して、おれは、俯いてしまった。

「顔を上げろよ」

 つっつーが、そう言ってくれた。

 顔を上げた先には、つっつーとかっちゃん。

 つっつーが、口を開く。

「ごめんな、おれ、知らずに傷つけてしまってたんだな。おれ、ずっと颯太と友達でいたいし、就職活動、応援するよ」

 かっちゃんが、少し俯く。

「おれも、ごめん。全然、颯太の気持ちに気づけてあげられなくて。で、颯太は、どういう仕事に就きたいって思っているの?」

 そうか。

 その質問が、くるのか。

 おれに与えられたチャンスは、あと一回。

 それでも。

 ここで。

 言うのか。

 いや。

 大丈夫。

 2人なら、受け入れてくれるはず。

「漫画とか小説とかを、アニメとか映画、ドラマにする、ライツ事業部って言う部署が、出版社にはあってね。それを、目指してる」

 つっつーが腕を組む。

「メディア化ってこと?」

「そう」

 かっちゃんが、少し間を置いた後に、目を見開き、口を開く。

「めっちゃいいじゃん!おれ、好きな漫画がアニメになった時、最高の気分なんだよ!でも、そんな部署があるなんて知らなかったし!めっちゃいいじゃん!」

 つっつーは、腕を組みながら話す。

「確かに、面白そうだよね」

「2人とも、共感してくれるのか・・・・・・?」

「ああ!」

「当たり前よ!」

 よかったー!!!

 2人が、おれの夢を素晴らしいって言ってくれて。

「おれ、夢なんだよね。そう言う仕事に就くの」

 かっちゃんが、おれの目をじっと見つめる。

「夢は、でかいほうがいい。本当にでかい方がいい。おれも、お前とおんなじように、でっかい夢があるからよ」

「・・・・・・そっか!」

「ああ!当たり前よ!」

 おれ、2人と友達で、良かった。

「明日、TOEICを受けに行くんだ」

 そう言うと、かっちゃんが、え、って言う顔をする。

「おれも、TOEIC受けるよ!」

「え、マジで!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ