第六話
おれは、カフェによく行く。
よく行くというか、毎日行く。
バイトで稼いだお金は、ほとんどカフェに使っていると言っても過言ではない。
2月の下旬。
インターンも、会社説明会も、就活解禁に迫り、もう佳境だ。
それでも、おれは、おもちゃメーカーの一社しか、インターンには行けてなかった。
会社説明会もたくさん参加したけれど、内定につながるものは一つもなかった。
いわゆる、NNT(無い内定)ってやつ。
いつまで続くのかな。NNT。
「いらっしゃいませー、ご注文はお決まりでしょうか?」
「コーラでお願いします」
「コーラで、はーい失礼いたします」
カラト珈琲店。
窓際の席を、おれはいつも陣取る。
ここだと、車が通る景色とかも見えて綺麗だから。
おれは、履歴書とかエントリーシートとかに書きたいから、毎日カフェに来てから30分はTOEICの勉強をする。
TOEICの試験が、2月28日にあるから、それまでにしっかりと対策をしておかなければならない。
とるなら、700点。
まだ、黎明社のエントリーは始まっていない。
いつ、エントリーが始まるかはわからないけど、それに間に合えば運がいいし、間に合わなくても、面接でTOEIC700点とりました、と話せればそれだけでも強みだ。
でも、おれにとって、英語はそれだけの強みでは無い。
海外留学に、2年生の時、行ったのだ。
夏休み、短期で。
その時に、衝撃の出来事が起こった。
たくさんの国籍が集まる語学学校のみんなで、ロンドンの市街に遊びに行く時。
なんと、アニメの話題で盛り上がったのだ。
おれは、それを鮮明に覚えている。
もし、おれがライツ事業部に受かれば、その、語学学校で友達になった外国人のみんなにも、素晴らしいアニメを届けることができる。
日本中だけでなく、世界中にアニメを届けることができる。
そんな、憧れの仕事が、そこにはある。
だから、TOEICの対策をする。
その後は、自動車メーカーがインターンを募集しているから、それに応募する。
志望動機、自分の長所短所、学生時代に頑張ったこと。
毎回書いているけれど、とても大変で。
コピペもなかなか難しく、とても大変。
他にも、家電メーカーや、商社。
業界を絞れって言われても、なかなか難しくて。
だからおれは、たくさん受けようと思っている。
おれは、大学生活で、悔しいことがたくさんあった。
主に、彼女が作れなかったこと。
でも、大きないい企業から内定貰えば、みんな黙るでしょう、なんて思っているおれがいる。
本当は。
でも、本当は。
ライツ事業部に行きたい。
心から、そう、願っている。
恐れ入りますが、
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